かつ官とは何ぞや、本これ人民のために設くるものにあらずや
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かつ官とは何ぞや、本これ人民のために設くるものにあらずや、今や乃ち官吏のために設くるものの如し、謬れるの甚しといふべし。人民出願し及び請求することあるに方り、これを却下する時はあたかも過挙あるものを懲すが如く、これを許可する時はあたかも恩恵を与ふるものの如し、何ぞそれ理に悖るの甚しきや。彼ら元来誰れに頼りて衣食する乎、人民より出る租税に頼るにあらず乎、乃人民の豢養を受けて、以て生活を為しつつあるにあらず乎。およそ官の物金銭に論勿く、一毫といへども天より落つるにあらず地より出るにあらず、皆人民の嚢中より生ぜしにあらざる莫し。即ちこれ人民は官吏たる者の第一の主人なり、敬せざるを得べけんや。
民権これ至理なり、自由平等これ大義なり。これら理義に反する者は竟にこれが罰を受けざる能はず、百の帝国主義ありといへどもこの理義を滅没することは終に得べからず。帝王尊しといへども、この理義を敬重してここに以てその尊を保つを得べし。
−−中江兆民(井田進也校注)「一年有半」、『一年有半・続一年有半』岩波文庫。1995年、55−56頁。
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100年以上前の指摘なのですが、ふうむ、どうも改められた気配がありませんね(涙
⇒ ココログ版 かつ官とは何ぞや、本これ人民のために設くるものにあらずや: Essais d'herméneutique