覚え書:「仏大統領選 私はこう見る 英・政策研究センター オラム・クラム所長」、『毎日新聞』2012年5月12日(土)付。


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仏大統領選 私はこう見る
英・政策研究センター オラム・クラム所長

成長戦略、長期的視野で
 選挙では「上げ潮路線」を掲げる社会党のオランド前第1書記と、財政規律強化を訴えるサルコジ大統領の経済政策をめぐる対立が焦点となった。だが、年金支給年齢を62歳から60歳に引き下げるという(オランド氏の)選挙対策以外の政策では両者の主張に目立った違いは無いと分析している。
 サルコジ氏はメルケル独首相と共にこの2年半、欧州債務危機対策に奔走してきた。その「メルコジ」体制の崩壊で、欧州の危機対応に混乱が生じるとの見方もある。だが、過去の仏独関係を見ると同じ党派の首脳同士だけではなく、保守派のコール氏と左派のミッテラン氏、左派のシュレーダー氏と保守派のシラク氏など政党、主張が異なった場合でも協調が深まった例もある。
 危機の長期化を受けて、欧州は成長戦略も含めた新たな対応を構築する時期に来ている。メルケル氏はオランド氏の成長路線に耳を傾けることで、妥協の余地が生まれるはずだ。新たな政策を選択する余地が生まれるとも考えられる。
 財政規律一辺倒ではなく、長期的な視野で、欧州の成長戦略を描くことは極めて重要だ。もちろん、成熟社会の欧州がかつてのような高度成長を実現できるわけではない。だが、バブル経済崩壊後の日本と同様、社会保障改革、労働市場改革など痛みを伴う構造改革に踏み込まなければ、中長期的な成長路線の構築はできない。新たな仏独協調体制が新戦略を作り上げることを期待したい。【聞き手・会川晴之】
    −−「仏大統領選 私はこう見る 英・政策研究センター オラム・クラム所長」、『毎日新聞』2012年5月12日(土)付。

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