覚え書:「今週の本棚:哲学の練習問題=西研・著」、『毎日新聞』2013年01月13日(日)付。
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今週の本棚:哲学の練習問題=西研・著
(河出文庫・798円)
かつて同タイトルで毎日新聞文化面に連載され、1998年に刊行された本を文庫化したものだが、構成を一新。全体の3分の1が新たに書き下ろされた「大増補版」である。
「生まれ変わりは証明できるか」「宇宙に果てはあるか」「他人と『わかりあえない』と思うのはなぜ」といった素朴な疑問に、できるだけ難しい言葉を使わずに答えるスタイルは原著と同じ。哲学になじみのない読者も自然と哲学史のエッセンスに触れ、「物事を根底から考える」哲学の思考法を知ることができる。
筆者はフッサールの研究者。本書も「普遍性」を志向する現象学のアプローチが基本になっているが、背景にはきわめて現代的な問題意識がある。たとえば著者は哲学の動機として、(イスラエルとパレスチナに見られるような)世界像をめぐる信念の対立を「解きほぐして相互理解を進めたいという願い」を強調する。大幅に加筆された「社会正義」に関する考察などにも、現象学の方法への信頼がにじみ出ている。
川村易による独特な味わいの「考えさせる」イラストも多く描き加えられ、その面での楽しさもパワーアップした。(壱)
−−「今週の本棚:哲学の練習問題=西研・著」、『毎日新聞』2013年01月13日(日)付。
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