書評:リンダ・ポルマン(大平剛訳)『クライシス・キャラバン 紛争地における人道援助の真実』東洋経済新報社、2012年。




リンダ・ポルマン『クライシス・キャラバン 紛争地における人道援助の真実』東洋経済新報社、読了。人道援助の現場の混乱と真実をレポートする「衝撃」の一冊。飢えた子供への憐憫が集めた資金や物資は巨大な利権だ。それを援助団体、武装組織、地元の政府といった当事者たちが群がり奪い合う。

UNHCRのキャンプを拠点に出撃していく武装組織。「お涙頂戴」とPR合戦に明け暮れる当事者とNGO。人道援助という「金科玉条」の裏に見え隠れするジレンマを本書は紹介。幾多の現地取材に基づく筆者のレポートは読者を圧倒する。

本書はシニシズムを決め込むこと提言すると捉えるのは早計。ジレンマを無視し、募金をすれば終わり(=解決する)という善意という名で関係を絶つ他者意識を筆者は撃つ。善意で解決するとは思わないが、関わりと倫理を問う一冊。了。







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