書評:川田稔『戦前日本の安全保障』講談社現代新書、2013年。
川田稔『戦前日本の安全保障』講談社現代新書、読了。戦前日本の歩みとは、日露戦争での辛勝を例証するまでもなく、国際社会における安全保障と切っても切り離せない。本書は、山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山を取り上げ、主として戦間期における安全保障構想と国際秩序認識を考察する。
当時国是は、大陸権益を維持しつつその拡大が一貫。しかしそのアプローチは多様で驚く。山形はロシア協調、原は軍事協同から経済へシフトすることで協調外交を模索するが、国力の差が濱口の課題として重く立ちはだかる。多国間軍縮もその一つ。
著者は本書で取りあげるキーパーソンについて個別に論じており、本書はその入門的概観といってよい。外交・安全保障について戦前・戦後と「分断」の認識と捉えがちだが、今日に通底する側面も存在する。現在を考える上で押さえてべき一冊か。