覚え書:「第67回毎日出版文化賞 力作そろう トマス・アクィナス 神学大全」、『毎日新聞』2013年11月03日(日)付。


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第67回毎日出版文化賞
力作そろう

トマス・アクィナス 神学大全 全45巻完結
稲垣良典他訳(創文社・3990〜7980円)=企画部門

世紀またいだ偉業
 キリスト教神学最高の達成「神学大全」は今日も燦然と輝きを放つ。その翻訳が52年の歳月を経ていよいよ完結した。全45巻き39冊。高田三郎稲垣良典ら最高の訳者をえてわが国の知的資産に新しい宝石が加わった。
 中世の教会は何百年もかけて建造された。高くそびえるゴシックの尖塔は、日々たゆみない職人の努力とそれを支える協働の忍耐のたまものである。「神学大全」の訳業も、教会建築と同様、世紀をまたいだ偉業である。私が学生のころ、書店の書架に並ぶ番号は飛び飛びで、いつ完成するのかと見上げたものだ。企画に関わった人びとも多くは物故者となり、栄誉で報いるすべもない。出版という使命を深く理解した先人の覚悟にただ頭が下がる。
 「神学大全」は特徴的な問答のやりとりからなり、問題の所在とさまざまな学生が紹介されたあと、トマス・アクィナスがもっとも妥当と考える学説をのべるスタイルで晋。スコラ哲学と揶揄するならせよ、西欧の哲学も科学もここから始まった。敬意とともに改めて全巻を味わいたい。(橋爪大三郎

いながき・りょうすけ 九州大名誉教授(哲学、法哲学)。1928年生まれ。東京大卒、南山大、九州大、福岡女学院大などの教授を歴任。中世哲学研究の第一人者として知られる。著者に「習慣の哲学」「抽象と直観」など。
    −−「第67回毎日出版文化賞 力作そろう トマス・アクィナス 神学大全」、『毎日新聞』2013年11月03日(日)付。

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