覚え書:「今週の本棚・新刊:『スズメ つかず・はなれず・二千年』=三上修・著」、『毎日新聞』2013年11月24日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『スズメ つかず・はなれず・二千年』=三上修・著
毎日新聞 2013年11月24日 東京朝刊

 (岩波科学ライブラリー・1575円)

 茶と黒が入り交じった羽に薄茶の腹、地味な外見ながら、ちゅんちゅんと可愛らしい鳴き声で日本人に親しまれてきたスズメ。庭で跳ねていたり、軒先でさえずっていたり、こんな身近な鳥はないだろう。だが、はたしてわれわれはどれだけスズメのことを知っているだろうか。本書は、誕生から人間との関わり、そして未来まで、軽妙な語り口でこの小さき鳥を解説する。

 まず著者は「スズメはもっとも変な鳥」と、軽いジャブを繰り出す。日本には約600種もの鳥が記録されているのに、「人にべったりなのは、スズメとツバメくらい」というのだ。「スズメが恐竜である」とも挑発する。恐竜の一部が鳥の祖先となり、さらにスズメのご先祖様がアフリカで生まれたという。

 理系の話だけではない。古くは天若日子(あめのわかひこ)の葬式で米をつく役としてスズメが『古事記』に登場し、最近は鳴き声にちなみ、カップルが夜結ばれたことを暗示する「朝ちゅん」なる言葉があることも紹介される。毎朝の通勤・通学路、頭上を飛ぶスズメたちの姿にふと足を止め、その行き先を目で追いかけてしまいたくなりそうだ。(広)
    −−「今週の本棚・新刊:『スズメ つかず・はなれず・二千年』=三上修・著」、『毎日新聞』2013年11月24日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20131124ddm015070077000c.html





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