覚え書:「特定秘密保護法に言いたい:官僚の負の文化、変えねば−−ノンフィクション作家・柳田邦男さん」、『毎日新聞』2014年01月07日(火)付。

        • -

特定秘密保護法に言いたい:官僚の負の文化、変えねば−−ノンフィクション作家・柳田邦男さん
毎日新聞 2014年01月07日 東京朝刊


 ◇柳田邦男さん(77)

 官僚の世界では、防衛や外交分野に限らず、一般的な情報まで何でも秘密にしようとすることが当たり前になっている。政府の東京電力福島第1原発事故調査・検証委員会や、環境省水俣病問題に係る懇談会などにかかわった経験から、秘密主義という「負の文化」を強く感じている。

 最近、大阪府警や鹿児島県警で虚偽調書の作成や調書の改ざんが発覚した。不都合なことはなかったことにするし、ないと困ることはあったことにする。内実を問わず数さえ合えばいい、という考え方を「員数主義」と言うが、旧日本軍にはびこったこの体質が、今の官僚にもある。

 戦前、軍事上の機密である軍機が増えたように、秘密は増殖するだろう。安倍晋三首相は「重層的な仕組みで恣意(しい)的な(特定秘密の)指定がなされないようにしている」と言う。しかし、法律は拡大解釈可能な条文を含んでおり、韓国軍への銃弾提供の際にみられた武器輸出三原則の解釈変更同様、突然運用が変わる恐れがある。

 政府は「一般の人は処罰されない」と言っている。一方で、石破茂自民党幹事長は、デモをテロにたとえたり、特定秘密に関する報道への処罰の可能性に言及した。結果としては無罪になるような事例でも、政治状況を都合よくするために、見せしめ的に事件化できる可能性を秘めた法律だ、という地金をさらけ出した。声を上げ続け、特定秘密保護法も、官僚の負の文化も変えなければならない。【聞き手・臺宏士】=随時掲載

==============

 ■人物略歴

 ◇やなぎだ・くにお

 1936年生まれ。「マッハの恐怖」で大宅壮一ノンフィクション賞。近著に「終わらない原発事故と『日本病』」。
    −−「特定秘密保護法に言いたい:官僚の負の文化、変えねば−−ノンフィクション作家・柳田邦男さん」、『毎日新聞』2014年01月07日(火)付。

        • -


http://mainichi.jp/shimen/news/20140107ddm012010066000c.html




102

Resize2013



終わらない原発事故と「日本病」
柳田 邦男
新潮社
売り上げランキング: 8,516