覚え書:「書評:憲法と、生きる 東京新聞社会部 編」、『東京新聞』2014年01月19日(日)付。

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憲法と、生きる 東京新聞社会部 編

2014年1月19日


◆一人ひとりの身近に
[評者]横尾和博=文芸評論家
 「憲法」が身近ではなかった。抽象的で日々の生活からは遠く離れていた。多くの人がそう感じているのではないか。私も同様だ。しかし自民党憲法改正草案を読んで驚愕(きょうがく)した。「国防軍」「国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り…」、時代錯誤もはなはだしい。だが安倍首相は本気で秘密保護法、国家安保戦略、新防衛大綱、靖国参拝など一連の動きで解釈改憲、そして成文改憲へひた走る。
 そんななかで、本紙連載をまとめた本書は、大所高所から憲法を語るのではなく、誠実な取材によって、登場人物たちに、いかに時代のなかで憲法と向きあったのかを語らせている。権力に遠慮しない裁判官、気骨の学者、特高警察の監視下にあったキリスト教の牧師など、彼らの生き方の基本に憲法があった。九条だけでなく基本的人権、思想信条宗教の自由、健康で文化的な生活の権利など、いまのあたりまえの暮らしを憲法が保障していることにも改めて思いが至った。
 また、本書は福島や沖縄の光が届かないところにも憲法の光をあてている。「市井の憲法」がモチベーションなのだ。
 敗戦という大きな犠牲のうえにできた現憲法だが、私も含めて近現代史や政治をよく学ばなかったツケが回ってきたようだ。法律論としてではなく、心のなかにこそ憲法はある。本書は「一人ひとりの憲法」を考えるための参考書である。
 (岩波書店・1890円)
 中日新聞東京本社が関東地方と静岡県東部で発行している地域ブロック紙
◆もう1冊 
 『現代語訳 日本国憲法』(伊藤真訳・ちくま新書)。日本国憲法大日本帝国憲法の現代語訳と逐条解説。
    −−「書評:憲法と、生きる 東京新聞社会部 編」、『東京新聞』2014年01月19日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014011902000164.html





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