覚え書:「今週の本棚・新刊:『マーシャル諸島の政治史』=黒崎岳大・著」、『毎日新聞』2014年02月23日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『マーシャル諸島の政治史』=黒崎岳大・著
毎日新聞 2014年02月23日 東京朝刊

 (明石書店・6090円)

 西太平洋は赤道のすぐ北にサンゴ礁が点在するマーシャル諸島共和国がある。戦前に日本が統治し、1986年に米国から独立した同国の政治史だ。10年に及ぶ現地調査の成果で、選挙結果などのデータ、住民への聞き取りも豊富。民族誌や単なる米国の被害者扱いといったありがちな視点だけではない研究書となった。

 人口わずか6万人、陸地面積は東京・八王子市ほどしかないが、米国の強い影響下にある点など、日本の戦後史を連想できる面も。政治家や官僚ら国のエリート層の形成過程は興味深い。以前からの首長層が独日米と代わった宗主国の意向を受けつつ君臨する一方、特に日米の統治下で、結果として新たな指導者層が平民の上層から生まれた。いわば、近代国家の外皮の下に、伝統的な階層構造が変形しつつ残ったわけだ。

 2000年に初めて新エリート層出身の大統領が誕生した話は、どこか日本の民主党政権を思わせる。中央と地方の利害対立もある。クワジェリン環礁の米軍基地やビキニ環礁の核実験は沖縄や広島・長崎に似ていないか。小国のしたたかさや矛盾は、私たち自身を振り返るヒントにもなるはずである。(生)
    −−「今週の本棚・新刊:『マーシャル諸島の政治史』=黒崎岳大・著」、『毎日新聞』2014年02月23日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140223ddm015070023000c.html





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