覚え書:「今週の本棚・新刊:『ローマ五賢帝』=南川高志・著」、『毎日新聞』2014年02月23日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『ローマ五賢帝』=南川高志・著
毎日新聞 2014年02月23日 東京朝刊

 (講談社学術文庫・924円)

 最高権力者の暗殺は側近がからまないと成功しにくい。ドミティアヌス帝の暗殺には后も近衛隊長官も関与していたという。もう暴君はこりごりとばかり、五賢帝の世がつづいたのだろうか。「人類史の至福の時代」ともいわれる2世紀のローマ帝国、その実態はどうであったのか。

 前帝暗殺者にかつぎ出された老帝ネルウァだが、近衛隊は反抗していた。次の皇帝としてトラヤヌスを養子にしたが、裏では推薦というよりも簒奪(さんだつ)ともいえる策動があったらしい。治世の半分を属州視察に努めたハドリアヌス帝は元老院側からすれば暴君にすぎなかった。それでも晩年には絶大な権力を握っている。敬虔(けいけん)なアントニヌスを後継者に選定するという周到さも忘れなかった。じっさいアントニヌス帝は非の打ちどころがなく、特筆すべき出来事もないほど平穏な23年間だった。つづくストア派の哲人マルクス・アウレリウスは皇帝になりたくなかったという。有徳の人格者だったが、多事多難に襲われ時代に恵まれなかった。

 皇帝たちは元老院に支持されることが重要であったが、その背景にある親族・姻戚関係などの人脈があざやかに浮かびあがってくる。(凌)
    −−「今週の本棚・新刊:『ローマ五賢帝』=南川高志・著」、『毎日新聞』2014年02月23日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140223ddm015070022000c.html





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