書評:木下直之『戦争という見世物 日清戦争祝捷大会潜入記 』ミネルヴァ書房、2013年。




木下直之『戦争という見世物 日清戦争祝捷大会潜入記』ミネルヴァ書房、2013年、読了。日清戦争に勝利し、日本中が沸いた明治二七年一二月九日に開催された日清戦争祝捷大会に美術史家の著者が潜入し、その情景を実況したのが本書。SFチックな構えとは裏腹に、明治国家がいかに国民を舞い上がらせたのか浮かび上がらせる。

著者は当時の報告書や写真帖、そして報道から「見世物」を立体的に描き出す。初の対外戦争は連戦連勝だったが、その高揚感が伝わってくる。そしてこの一体となる高揚感こそ近代日本のナショナリズムの原型となる(その暗転が日露戦後だろう)。

川上音二郎の戦争劇から不忍池での「黄海海戦」の再現(池に模造の定遠、致遠を浮かべて焼撃というのにはフイタ)まで−−。

ことあるごとに「反日」デモを嗤う風潮が強いがそれは天ツバというもの。歴史何を学ぶのか。本書の意義は大きい。







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