覚え書:「(声)知れば越えられる感情の壁」、『朝日新聞』2014年03月09日(日)付。
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(声)知れば越えられる感情の壁
主婦(東京都 41)
3日の朝日歌壇で見知らぬ言葉に出会った。「春窮とう過去にありたる語を知りて立春のあさ大根葉干す」という一首だ。春に窮する?
手元の百科事典を引いて愕然(がくぜん)とした。朝鮮で、封建時代や日本の統治時代の過酷な搾取制度下、農民が季節の端境期に食糧に窮し、山野の草根や木皮を食べて延命した状態をいう、などとある。言葉が生まれる時には必ず人の思いや歴史、文化的背景がある。言葉を知ることは、その背景を知るということでもある。
現在、嫌韓、嫌中などの動きやヘイトスピーチの問題などが噴出しているが、正しい知識に基づく批判なのか不安になる時がある。日常生活の鬱憤(うっぷん)を安易に転嫁し、溜飲(りゅういん)を下げている側面はないか。知らないがゆえの誤解が生む「感情の壁」ならば、相互を正しく知ることで乗り越えられる。実りある交流は、感情のもつれの先にある。
言葉を一つ知る、という小さなことが、文化衝突の回避という大きなことにもつながる。草の根での文化交流の大切さに、改めて気づかせてくれた一首に感謝したい。
−−「(声)知れば越えられる感情の壁」、『朝日新聞』2014年03月09日(日)付。
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