覚え書:「再生への提言:東日本大震災3年 漁業復興へ海辺整備=カキ養殖業・畠山重篤氏」、『毎日新聞』2014年03月12日(水)付。

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再生への提言:東日本大震災3年 漁業復興へ海辺整備=カキ養殖業・畠山重篤
毎日新聞 2014年03月12日 東京朝刊

 ◇畠山重篤(はたけやま・しげあつ)氏

 豊かな海を作るために、全国に広がった、山に木を植えて森を守る運動を続けて26年になる。私がカキ養殖を営む宮城県気仙沼市の海は、東日本大震災でいったんは海辺に生き物が全くいなくなった。「海は死んだ」と心配したが、森から海へ供給される鉄分などの養分で見事に再生し、カキやホタテの水揚げも元に戻った。海底は今、昆布やワカメなどの海藻でジャングルのようだ。震災の年も植樹祭を休まず、海と川と森を地域全体で守ってきた私たちの行動は正鵠(せいこく)を射ていたと思う。

 問題は地盤沈下だ。震災で海辺の土地は1メートルぐらい沈み、満潮になると文字通り潮が満ちてしまう。そんな地域が岩手から福島まで何百キロと続いていて、漁船を着ける岸壁や、水産物の処理や加工をする作業場などの復興が、なかなか進まない。これらが整備されれば、漁業者は自力で立ち直っていける。公共事業をするなら、こうした海との接点の土地について、かさ上げなどの対策を急いでもらいたい。

 三陸地域は津波に繰り返し襲われてきた。それは仕方がない。海が怖いとか津波を恨むという考えはない。

 どんなに巨大防潮堤を造っても、あのすさまじいエネルギーの前では残念ながら役に立たない。それよりも避難路や逃げ道を整備してほしい。とにかく高い所に逃げて、命さえ助かれば、何度でも再建できる。それが私たちの歴史だった。

 復興には時間がかかる。全部をすぐやれと言っても無理。自治体が「早く予算を使わないと引き揚げられてしまう」と考えてしまい、結果的に無駄遣いをしないように、国は10年単位ぐらいの長期的視野で復興計画を実行してほしい。そうすれば地域でお金も回るし、雇用問題も緩和される。そのうち本業も回復してくる。

 世界中から支援をいただいたので、今後は「自然をきれいにすれば飯が食える(=経済的に成り立つ)」という考え方を世界に広めて恩返しをしたい。これからも山に木を植え、森を守って海を豊かにする活動を続けていきたい。【聞き手・江口一】=つづく

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 ■人物略歴

 NPO法人「森は海の恋人」理事長。2012年、国連フォレストヒーロー(森の英雄)に選ばれた。70歳。
    −−「再生への提言:東日本大震災3年 漁業復興へ海辺整備=カキ養殖業・畠山重篤氏」、『毎日新聞』2014年03月12日(水)付。

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