覚え書:「特定秘密保護法に言いたい:告発者が守られる社会に−−映画監督・周防正行さん」、『毎日新聞』2014年03月20日(木)付、+α

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特定秘密保護法に言いたい:告発者が守られる社会に−−映画監督・周防正行さん
毎日新聞 2014年03月20日 東京朝刊

(写真キャプション)インタビューに答える映画監督の周防正行さん=丸山博撮影

 ◇周防正行さん(57)

 「気持ちが悪い法律だな」。昨年秋、特定秘密保護法案の内容を知った時、まずそう感じた。

 既に監視カメラが街のあちこちに置かれ、法務当局は盗聴捜査のできる範囲の拡大を検討している。市民の情報が丸裸にされている中で、この法律により、時の国家権力は都合の悪い情報を隠すことができる。

 権力者に悪意がなくても権力は誤ることがある。にもかかわらず、権力の及ぶ範囲が肥大しつつある。ぼくらは民主主義を手放す道を歩んでいるのではないか。怖い。その怖さを感じている人がどれだけいるだろうか。

 刑事裁判の問題点を描いた映画「それでもボクはやってない」を撮った後、法相の諮問機関「法制審議会」の特別部会の委員になり、今の刑事訴訟法だって解釈により運用が変わることを知った。「秘密保護法は解釈によってどうなるのか」という議論があまりに少なかった。どう運用される可能性があるのか、検証しておくべきだ。

 秘密保護法施行までにしなければならないのは、一人一人が声を上げることだ。とても勇気のいることだと思う。日本の社会は人と違ったことをすると、それだけで排除されることがある。内部告発者にも冷たい社会だ。世の中の利益のために告発したことで、排除されたりする。告発者が守られるようにしなければならない。

 また、情報公開をさらに進め、権力者の行いを後の世代が検証できるようにすべきだ。【聞き手・青島顕、写真・丸山博】=随時掲載、ニュースサイトに詳報

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 ■人物略歴

 ◇すお・まさゆき

 1956年生まれ。代表作に「シコふんじゃった。」「Shall we ダンス?」。今秋「舞妓はレディ」の公開を控える。
    −−「特定秘密保護法に言いたい:告発者が守られる社会に−−映画監督・周防正行さん」、『毎日新聞』2014年03月20日(木)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140320ddm012010082000c.html



以下が「ニュースサイトに詳報」

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特定秘密保護法:映画監督・周防さん「内容に気持ち悪さ」
毎日新聞 2014年03月19日 21時27分(最終更新 03月19日 22時21分)


インタビューに答える映画監督の周防正行さん=東京都渋谷区で、丸山博撮影

 ◇「反対する映画人の会」に賛同

 昨年12月に成立した「特定秘密保護法」は、国の安全保障にかかわる情報を漏らした公務員らに厳罰を科す。年内にも施行される同法に関する映画監督、周防正行さん(57)へのインタビューの要旨は次の通り。

−−昨年末、「特定秘密保護法案に反対する映画人の会」に賛同した。政治的なメッセージを出すのをいやがる人もいる中で、なぜ賛同したのか?

 「娯楽映画」の作家だから政治的発言を控えようと思ったことはない。もともと社会的問題に関心がある人間だ。だから映画、演劇を見てきたし、それを見て青春時代に「どう生きるか」と考えてきた。司法制度改革につなげたいと、(刑事裁判の問題点を描いた)「それでもボクはやってない」(2007年)を撮ったし、(法相の諮問機関である)法制審議会の特別部会で委員になって発言している。

−−この法律を知ったのはいつか?

 昨年秋ぐらいにマスコミがにわかに取り上げるようになってからだ。内容を知って気持ち悪さを感じた。

−−「気持ち悪さ」とは?

 いま、法務当局が通信傍受法の対象になる犯罪の範囲を広げることを検討しているし、街を歩けば住民が自己防衛のために監視カメラを設置している。市民の情報は丸裸にされているのに、(この法律によって)国家権力はよろいで秘密を固め、自分たちに都合の悪いものは隠せるようになる。権力は道を誤ることがあるのに、権力の及ぶ範囲が肥大しようとしている。ぼくらは民主主義を手放す道を歩んでいるのではないか。怖い。怖いと感じない(人がいる)なら、(その人は)民主主義、個人の権利が肌身で分かっていないのではないか。

−−法律の問題として、他に感じるところは。

 秘密にされた情報が60年とか、場合によっては永遠に隠される恐れがあること。その時の権力者の行いを後の世代が検証できないのはよくない。国家の主権は一人一人の市民にあるのだから。(秘密を扱う人たちの身辺を調査する)適性評価も問題がある。

−−法制審の部会で感じたことは?

 「新しい司法制度改革」を話し合っているが、現在の刑事訴訟法だってそんなに悪いものではない。だが、いろんな解釈があって、たとえば被疑者(容疑者)が取り調べを受ける義務があるかどうかについても、学者によって意見が異なる。法律は解釈の仕方で運用が違ってくる。にもかかわらず、秘密保護法では解釈の仕方によってどうなるのか、あまりにも議論がされていない。作った側に悪意がなくても、一度できた法律は解釈、読み方によってどうにでも運用される。可能性を(事前に)きちんと検証しておかないといけないのに、なされていない。国会の議論だけではなく、学者による議論がもっと必要だ。

−−(12月とされる)施行までに市民のやるべきことは何だと思うか。

 反対のネットワークを作ることだ。すごく勇気がいることだと思う。日本は声を上げると排除されることがある国だ。内部告発者にも冷たい。公的な利益のために告発した人がかえって「身内を裏切った」として排除される。その結果、危ないことに近づかないでおこうとする。抑圧の強い社会、監視社会になるのが怖い。

−−「映画人の会」に加わった時に、情報公開について言及した。

 情報公開が日本ではきちんとできあがっていない。裁判員裁判で市民が死刑判決にまで携わるが、死刑囚は拘置所でどのように過ごしているのかも隠されている。オウム真理教の裁判では、拘置所から死刑囚を出廷させることに(検察側は)当初否定的だった。もし拒否するなら、彼らがどう過ごしているかを明らかにしたうえで、「だから出廷させるとこんな不都合が起きるのだ」と説明すべきだ。

 「お上(かみ)」(政府・行政)が「悪いようにしない」と言ってやっている。でも歴史を振り返ると、お上だって悪いことをすることがある。だからチェック機構をきちんと(整備)しなければならない。その第一歩が情報公開。その情報公開に真っ向から対峙(たいじ)する秘密保護法はよくないと思っている。廃止を求めます。

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http://mainichi.jp/select/news/20140320k0000m040093000c.html


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