書評:金成隆一『ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃』岩波書店、2013年、+ 「ムーク続々、日本の大学も 講義を無料ネット配信」、『朝日新聞』2014年03月21日(金)付。
金成隆一『ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃』岩波書店、2013年、読了。Massive Open Online Courseとは無料公開のオンライン講座の意。本書は、創設から利用者まで、現場取材でその現在をまとめたルポルタージュ。
名門大学が次々と授業をアップロード、全世界で学ぶ受講生は700万人を突破するという。「良質な高等教育は特権ではなくなった」。本書の山は受講生に対する徹底したインタビュー。学ぶ立場に不利な人々が自ら学習に取り組み始めている!
単純に「まね」しても始まらないし、自分でもよく分かるが同じ内容でもライブは異なってくる。しかし教育の沃野をはぐくむ側面としては利用してしかるべきだろう。日本の教育機関はどのように対応するのだろうか。
次の新聞記事は関連報道。
-
-
-
- -
-
-
ムーク続々、日本の大学も 講義を無料ネット配信
2014年3月21日
(写真キャプション)英語で講義を収録する京都大の上杉志成教授
日本の大学が4月以降、インターネットで授業を無料配信するサービスに続々と乗り出す。米国で2年前に始まった動きが国内でも本格化。ネットにつながれば誰もが高等教育を受けられる時代が幕を開ける。
■PRや社会貢献
大規模公開オンライン講座(MOOC〈ムーク〉)と呼ばれる教育サービスの初の日本語版。講義ビデオを自分のペースで視聴し、宿題や課題に取り組み、試験にも挑戦できる。水準に達すると教授から修了証をもらえる。大学卒業の資格を得られるわけではないが、米国では修了実績を企業の採用などにつなげる動きもある。
初のムーク配信に乗り出す大学側は、受験生や保護者らへのPRを狙って、実力派の教員を投入する。
早稲田大学は、政治経済学術院の栗崎周平准教授を抜擢(ばってき)した。ベテラン教授を出す案もあったが「今後の活躍が期待される新進気鋭の若手教員」に決めた。講座では、日本を取り巻く安全保障環境の理解をめざし、国際政治学の主要な理論などを概観する。栗崎准教授は米国の大学で教えた経験があり、英語でも講義できるため、英語版の公開も検討中だ。
関西大学が強調するのは「社会貢献」だ。学長補佐の青田浩幸教授は「税金も含めた予算で研究する以上、その結果を社会に公開していきたい」。学内の講義では、研究成果を高校生も含む一般社会に提供することが難しかった。ムークであれば、学外の受講生も一緒に考える講座が実現できると期待する。
これらの講座を運営するのは、日本オープンオンライン教育推進協議会(通称JMOOC)。米国を中心に海外でムーク人気が高まる中、日本語でも受講できる学習環境を整えようと、教育・通信業界や高等教育機関などが昨秋設立した。
協議会には20日時点で22大学が加盟し、少なくとも16大学が配信に乗り出す。協議会は、加盟大学が最初に作る3講座分の製作運営費として最大計160万円を助成する。福原美三事務局長は「加盟大学を100に増やし、300講座を公開したい」と話す。
こうした動きは、多くの人に学びの機会を広げることから「教育のオープン化」と呼ばれる。世界の動向に詳しい京都大学の飯吉透教授は「問われるのは講座の中身。最初の2〜3年間が肝心だ」と指摘する。「中身が良ければ、受講生が成長できたと実感でき、企業や官公庁などが採用や昇進に際してその学びの実績を活用するようになる。そして優れた授業を提供できる教員が評価されるという好循環が生まれる」
一方、東京大と京都大、大阪大の3大学は、米国の機関から授業を配信する。東大は2013年に提供した2講座を含め計5講座。京大は、物質―細胞統合システム拠点の上杉志成(もとなり)教授が、生物の仕組みや機能を分子の働きから考える全13週の本格的な講座を新年度に配信する。阪大は配信講座を選定中だ。(金成隆一)
■東大2講座、世界から8万人超
13年に英語でのムーク配信に乗り出した東京大。同年9〜12月、村山斉教授の「ビッグバンからダークエネルギーまで」(4週)と、藤原帰一教授の「戦争と平和の条件」(同)を米企業コーセラのサイトで配信した。この2講座に、世界中から8万人以上の受講生が集まった。
村山教授の講座には、144の国と地域から4万8406人が受講。10分前後の講義ビデオを毎週10本ほど視聴し、宿題や最終試験で水準に達して修了証を獲得したのは3754人(全体の約8%)だった。うち約半数の1918人が90点以上の成績優秀者だった。
藤原教授の講座には、158の国と地域から3万2285人が受講。毎週約10本のビデオを視聴し、計800語のエッセーを提出するなどして、修了証を獲得したのは1629人(同5%)。アフリカの受講生が目立ち、政情が不安定なことが、平和をテーマにした講座への関心を高めた可能性があるという。
講座終了時に大学院進学の問い合わせや寄付の申し出もあった。
世界で配信されるムークは急増しており、計1千講座に迫る。受講生が5千人ほどの講座もある中で、計8万人が受講したことについて、ムーク配信を担う東大の山内祐平准教授は「世界に東大の魅力をPRするという目標は十分に達成できた」と話した。
■新年度に無料で受けられる講座 ※は英語を使用、2月末現在、敬称略
【配信機関】
◆講座名
大学名 教員 開講日
*
【JMOOC(ジェームーク)<日本>】
◆日本中世の自由と平等
東京大 本郷和人 4/14
◆インターネット
慶応大 村井純 5/19
◆国際安全保障論
早稲田大 栗崎周平 6/16
◆オープンエデュケーションと未来の学び
北海道大 重田勝介ら 7月予定
◆服飾の文化と歴史
文化学園 植木淑子ら 未定
◆※The Uncommon Folk: Cultural Preservation in Japan
国際教養大 ダレン・アシュモア 未定
◆歴史都市京都の文化・景観・伝統工芸
立命館大 矢野桂司ら 未定
◆マンガ・アニメ・ゲーム論
明治大 森川嘉一郎ら 未定
◆経営(マネジメント)入門
グロービス経営大学院 荒木博行ら 未定
◆俳句 十七字の世界
大手前大 川本皓嗣 未定
◆化学生命工学が作る未来
関西大 吉田宗弘ら 未定
◆※にほんご にゅうもん(英語版)
放送大 山田恒夫 4/14
◆コンピュータのしくみ
放送大 岡部洋一 4/14
【Coursera(コーセラ)<米国>】
◆※From the Big Bang to Dark Energy
東京大 村山斉 未定
◆※Conditions of War and Peace
東京大 藤原帰一 未定
◆※Interactive Computer Graphics
東京大 五十嵐健夫 夏
◆※Welcome to Game Theory
東京大 神取道宏 冬
【edX(エデックス)<米国>】
◆※Visualizing Postwar Tokyo
東京大 吉見俊哉 秋
◆※The Chemistry of Life
京都大 上杉志成 4/10
◆未定
大阪大 未定 未定
−−「ムーク続々、日本の大学も 講義を無料ネット配信」、『朝日新聞』2014年03月21日(金)付。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11040729.html