覚え書:「今週の本棚・新刊:『原発メルトダウンへの道』=NHK ETV特集取材班・著」、『毎日新聞』2014年03月23日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『原発メルトダウンへの道』=NHK ETV特集取材班・著
毎日新聞 2014年03月23日 東京朝刊

 (新潮社・1785円)

 福島第1原発事故に至る日本の原子力業界の内幕を、関係者の膨大な証言で構成した。NHKのドキュメンタリー番組の単行本化だ。

 ただただ、愚かしい。読み進めるうちに、それだけを思った。キーマンのメンツ、上司の指示、コスト重視、一度始めた計画は、必ず最後まで突き進む「プロジェクト不滅の法則」……。巨大な悪などは何もなく、ごく平均的な仕事熱心な人々の、ある種の凡庸さが事故をもたらしたことを、これでもかというほどに思い知らされる。他方、1970年代初頭に反原発運動が盛り上がり出し、原子力船むつの放射線もれなどが起きると、今度は原子力のPR広告が各全国紙に続々と載り始める。安全をうんぬんすること自体が「国民を不安にさせる」とタブー視され、「原子力ムラ」自体が、自らの発した安全神話にのみ込まれていく。核燃サイクルを実現させようとしてきた当事者たちが、核兵器開発と自分たちの研究は別物と信じていたとの話も、興味深い。

 原発再稼働に向けた議論が目立つ昨今である。私たちは、再び同じ道を歩もうとしている気がしてならない。(生) 
    −−「今週の本棚・新刊:『原発メルトダウンへの道』=NHK ETV特集取材班・著」、『毎日新聞』2014年03月23日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140323ddm015070049000c.html





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