覚え書:「書評:滅亡へのカウントダウン 人口大爆発とわれわれの未来(上)(下) アラン・ワイズマン著 鬼澤忍訳」、『東京新聞』2014年03月23日(日)付。

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滅亡へのカウントダウン 人口大爆発とわれわれの未来(上)(下) アラン・ワイズマン著 鬼澤忍訳

2014年3月23日

少子化日本、転換モデルに
[評者]石弘之=環境学
 本書は、世界的なベストセラーになった『人類が消えた世界』(鬼澤忍訳・同社)につづくワイズマンの新作。すでに七十億人を超えて四日半ごとに百万人の割合で増加をつづける世界人口が、政治、経済、環境、資源などに今後どのような危機をもたらすのか。各国の現場や専門家を訪ねて足でまとめあげた労作だ。
 国連は昨年、二〇五〇年までに世界人口が九十六億人に達するとする新たな推計をまとめた。これまでの予測よりも三億人が増えたため、人口爆発への危機感が再燃している。
 世界人口は、このまま増加がつづけば二一〇〇年には百億人を超える可能性がある。著者は、十八世紀末にマルサスが提示した人口増加と食糧不足による貧困と破滅というシナリオを、環境悪化、水不足、エネルギー需要などさまざまな側面から補強する。
 第一章はイスラエルの原理派ユダヤ教徒からはじまる。自派の勢力を拡大する目的で、一家族平均七人近い子どもをつくる。このために、エルサレム市内の彼らの居住地域は人口過剰で荒廃し、貧困層に転落した世帯が多い。
 次々に繰り出される事実やエピソードには、意表をつかれるものが多い。先進国では総じて人口の停滞が問題と思っていたが、英国は旧植民地からの移民の流入のために急激に人口が増え、二〇五〇年までに西欧で最大の人口国となりそうだ。この増加を牽引(けんいん)しているイスラム系住民に対する警戒心から、人種排斥が激しくなっている。
 日本についても一章を割く。国内では悲観論が渦巻く少子化や人口減を、著者は肯定的にとらえる。知的で教育水準の高い日本人は、人口が持続可能なレベルに転換する最善の機会を示す国であるとも言い切る。
 結論は「人道的に人口を減らせなければ、自然が整理解雇通知の山を人類に手渡すことになる」。人口圧で崩壊した自然が人類を養いきれなくなる、という警告だ。
早川書房・各2100円)
 Alan Weisman 1947年生まれ。米国のジャーナリスト。
◆もう1冊 
 P・R・エーリックほか著『人口が爆発する!』(水谷美穂訳、新曜社)。気象・資源などの観点から世界的人口増加に警鐘を鳴らす。 
    −−「書評:滅亡へのカウントダウン 人口大爆発とわれわれの未来(上)(下) アラン・ワイズマン著 鬼澤忍訳」、『東京新聞』2014年03月23日(日)付。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014032302000170.html





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滅亡へのカウントダウン(上): 人口大爆発とわれわれの未来
アラン ワイズマン
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