覚え書:「みんなの広場 父が恩を受けた一番身近な国」、『毎日新聞』2014年04月16日(水)付。
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みんなの広場
父が恩を受けた一番身近な国
元会社員・69(大阪市都島区)
90歳で他界した父は軍隊生活で心がすさむ経験をした後、太平洋戦争末期に軍属として朝鮮半島に渡りました。冬には酷寒となる地で病に侵され、今日は生き延びられるだろうかという日々を送っていました。
そんな様子を見ておられたのか、ある時、1人の朝鮮人女性が片言で「どうぞ食べてください」と衣服の中から温かいおにぎり2個を取り出してくださったそうです。父は驚きながらも無我夢中でいただいたといいます。そして生前、ことあるごとにその女性の優しい瞳は忘れられない、恩がある、と口にしていました。
私の小学校のクラスメートに「キンさん」がいて、差別を受けていました。「外国に来てつらい思いをしているのだから、親切にしてあげなさい」と父母から常に言われました。彼女と親しくなると、家系のことなどを話してくれました。最近、大ファンになった韓国ドラマを見ていると、彼女を思い出します。一番身近な国と仲良くしてほしいと切に願うばかりです。
−−「みんなの広場 父が恩を受けた一番身近な国」、『毎日新聞』2014年04月16日(水)付。
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