覚え書:「著者に会いたい 地震と独身 酒井順子さん [文]大上朝美」、『朝日新聞』2014年04月13日(日)付。
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著者に会いたい
地震と独身 酒井順子さん
[文]大上朝美 [掲載]2014年04月13日
■働き、守り…人生が揺れた
酒井さんらしい端的な書名だ。東日本大震災後の報道では、「家族」に焦点が当てられがちだったが、独身だっていたはず。何をしていたのだろうか。現地を訪ね、多くの人に話を聞き、月刊連載をした。「たくさんの方に聞いたのも、近い過去のことを書くのも初めてで、ちょっとプレッシャーも」あったそうだが、そこはふだん通りの悠揚迫らぬ「ですます調」で、独身たちの未曽有の経験を受け止める。
「まず驚いたのは、独身がすごく働いたということ」と言う。戦場のような病院をはじめ非常時の仕事の現場で、独身はよく使われた。「家族持ちが家族を守るべき時に、家族がないから他の人を守れる。独身でよかったという人もいました」
「働いた」「つないだ」「守った」……と、章立てのさまざまな局面の中に「結婚した」も。「震災婚」という言葉ができたが、「震災離婚」もあり、ことはそう単純にはいかない。自身は「案外、地震によって結婚観は変わりません」と言う。
Uターン、Iターン、ボランティア、放射線避難など、独身ゆえの身軽さで動いた人たちは多い。更に連載の1年間に、結婚、出産、転職、引っ越し、出家(!)と、取材した独身たちの境遇も大きく変わった。
「『負け犬の遠吠(とおぼ)え』が都会の独身者なら、こちらは地方の独身者の話になるのかなと思っていたら、出入りが激しくて結局、地震で人生が揺れた人たちの本になりました」
書いたことで酒井さんもまた、その揺れに連なる一人だ。取材した人はたいてい年下で、「自分がけっこう大人だったことに気づかされた」そうだ。
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新潮社・1512円
−−「著者に会いたい 地震と独身 酒井順子さん [文]大上朝美」、『朝日新聞』2014年04月13日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2014041300011.html