覚え書:「どう動く:集団的自衛権・識者に聞く マイケル・スウェイン、米カーネギー国際平和財団上級研究員」、『毎日新聞』2014年04月24日(木)付。

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どう動く:集団的自衛権・識者に聞く マイケル・スウェイン、米カーネギー国際平和財団上級研究員
毎日新聞 2014年04月24日 東京朝刊

(写真キャプション)米首都ワシントンでインタビューに答えるカーネギー国際平和財団のマイケル・スウェイン上席研究員=4月16日、西田進一郎撮影

 ◇利点と限界、理解を

 「中国が台湾に軍事行動をとる『台湾有事』というシナリオがある。その場合、米国にとって中国と衝突、対決するのは最悪のケースだ。在日米軍との関連で、日本が米国を支援することが不可欠だ。米国の司令官や指導者が、そうした状況で日本が確かな行動をとると想定できれば、中国に抑止のメッセージを送ることにもなる。

 中国は、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更は日本の軍事拡張の始まりであり、最終的には平和憲法を捨てるのではないかと考えている。これはゆがんだ見方であり、日本の政治、経済両面から考えて、可能性は極めて低い。ただ、中国がなぜ懸念しているのかは分かる。台湾有事が優先順位の第1位だからだ。(沖縄県の)尖閣諸島を巡る有事よりも台湾有事だ」

 中国は台湾を「核心的利益」と位置付ける。米海軍の西太平洋への接近を阻止し、領域への介入を拒否する戦略(A2AD戦略)のもとで軍事力を拡大している。安倍晋三首相は2月10日の衆院予算委員会で「北朝鮮が米国を攻撃したとして、北朝鮮に武器・弾薬が運ばれるのを阻止できるのに、阻止しなくていいのか」と答弁。集団的自衛権の行使が必要な例として北朝鮮を挙げたが、台湾有事にはこれまで言及していない。

 「集団的自衛権は非常に大きな領域だ。日本の安全保障に影響を与える有事への日米共同対処の際に、日本はより自由で柔軟な作戦運用が可能になる。あくまで一定の限られた条件の下で、日本が集団的自衛権を行使できるようになるのはいいことだろう。特に『国際的な支持』が基本線だ。

 米軍と自衛隊による共同パトロールといったことは、日本の政治的文脈上、不可能だ。現在の中国や西太平洋の状況を考えると、日米双方にとって有益とも思わない。それによって解決されること以上に、大きな問題を生む」

 集団的自衛権の行使容認について、米海軍制服組トップのグリナート作戦部長は昨年5月の講演で、「日米合同の空母機動部隊を作ることもできる」と語った。西太平洋からインド洋に展開する米軍最大の「第7艦隊」の空母機動部隊に、海上自衛隊護衛艦が加わる構想だ。しかし、日本国内では、集団的自衛権に基づく海上交通路(シーレーン)防衛には慎重論も根強い。

 「集団的自衛権の行使容認にあたっては、日米双方がその利点と限界を明確に理解し、高い透明性がなければならない。また、さまざまな不測の事態への対応計画において、憲法解釈変更が現実に何を意味するのかをかなり協議しなければならない。

 解釈変更を待たずに話し合えるものもある。例えば、尖閣を含む特定の不測の事態にどう対応するかを議論することだ。それは、互いにより大きな理解を得るうえで非常に有用だ」

 ヘーゲル米国防長官は今月上旬に日本や中国を訪問した際、尖閣諸島が対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲であり、米国が防衛義務を果たすことを強調した。首相とオバマ大統領の24日の会談でも、尖閣問題や集団的自衛権は主要な議題の一つになる。【構成・西田進一郎】=随時掲載

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 ■人物略歴

 ◇Michael D.Swaine

 1951年生まれ。ハーバード大で博士号を取得。中国の国防・外交政策や米中関係が専門。昨年、西太平洋の安全保障環境を分析した「2030年の中国の軍事力と日米同盟」の研究成果を発表した。 
    −−「どう動く:集団的自衛権・識者に聞く マイケル・スウェイン、米カーネギー国際平和財団上級研究員」、『毎日新聞』2014年04月24日(木)付。

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