書評:小川原正道『日本の戦争と宗教 1899−1945』講談社、2014年。

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小川原正道『日本の戦争と宗教 1899−1945』講談社、読了。本書は戦前日本の宗教政策を踏まえた上で、戦争と宗教の関わりについて俯瞰する一冊。キリスト教が公認された1899年から太平洋戦争の終結まで、宗教横断的に、宗教と政治の関わりを明らかにする。

仏教、神道の積極的関与はよく知られているが、公認後も絶えず迫害の対象となったキリスト教においても協力事例が散見される。三教会同が近代日本の宗教の社会性を規定したが、垂直的な現世批判の論理はいずこへ。歴史に学ぶ必要性あり。

警世の反戦論に宗教の例外はほとんど無い。しかしその担い手は全て「個人」である。暴挙再来の時、「宗教者たちは、あるいは我々日本国民は『殉教』の担い手たり得るのか」。その余韻は重苦しく鳴り響き続けている。

歴史的検証と批判に躊躇する必要はない。しかし鬼の首を取るかの如きはコンテクストを理解しない軽挙妄動であるのも事実だ。宗教私学の恭順の歴史は確かに「敗北」でえある。しかし、国家に勝利するためには「場」の維持も必要だからだ。

殉教したのは僅かである。しかし「反体制的・反社会的とみなされた宗教団体の存在が、「協力的」で「安全」な宗教の動員による国民強化という国策を海だし、そこに賛同した宗教団体には非課税特権が与えられた」。「相互依存」である。
 






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