書評:猪谷千香『つながる図書館 コミュニティの核をめざす試み』ちくま新書、2014年。

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猪谷千香『つながる図書館 コミュニティの核をめざす試み』ちくま新書、読了。24時間貸し出し可能な図書館から米粉ベーカリーを貸し出す図書館まで。これまで公共図書館は「無料貸本屋」と批判を受けてきたが、今、図書館に変化が起こっている。私たちの暮らしをよくする全国の図書館を歩いた最新の報告。

公共図書館とは「赤ちゃんからお年寄りまで利用者の年齢を選ばす、職業や収入も選ばず、無料で使える稀有な公的施設」。「無料でベストセラーを借りられる」場所だけの理解であれば、本書の報告に驚き「あなたの人生、損してますよ」と言われれば納得してしまう。

図書館とは何か。「図書館にはその土地の歴史と記憶が保存されている。同時に本というメディアを通じた人と人との交流の場であり、人々の心のよりどころでもあるのだ」。だからこそ地域地域でその取り組みはユニークなるものとなるし「コミュニティの核」となる。

図書館に興味がある人もない人にも読んでほしいし、コミュニティ・デザインの実践事例としても本書は楽しく読むことが出来る。指定者管理制度や官製ワープアの問題にも言及あり。ひととつながることの意義を再考させてくれる一冊。

(以下、蛇足)
図書館は「知の拠点」ゆえ「知りたい」ことに答えてくれる場所でもある。コンシェルジェを置いたり暮らしの相談へ連動する図書館もある。しかし「本」にちなむ身近な疑問解消の報告が面白い。これは福井県立図書館の話。「カンサンジというテレビに出てる評論家、生姜みたいな名前の人」の本を知りたい⇒姜尚中

福井県立図書館が受けた他の珍レファレンス⇒「100万回死んだねこ」(『100万回生きたねこ』)、「衝撃の巨人」(『進撃の巨人』)、「村上春樹のオオサキさんがどうしたとか……」(『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』)などw


覚え違いタイトル集|図書館 - 福井県立図書館・文書館・文学館


まあ、これは他人事ではないのだけど 






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