文化評論
- インタビュー:歴史の巨大な曲がり角 社会学者・見田宗介さん 2015年05月19日 深刻な環境問題を抱えつつも、経済成長を求め続ける――。私たちの文明が直面する根本的なジレンマに対して、日本を代表する社会学者・見田宗介さんは「ならば成長をやめればよい…
- 論壇時評:ことばを贈る 根本から考えるために 作家・高橋源一郎 2015年4月30日(写真キャプション)高橋源一郎さん=郭允撮影 東日本大震災からまだ1週間しかたっていなかった2011年3月19日、わたしが勤めていた大学の卒業式が中止になった。理由…
- 耕論:何のための英語入試改革 多田幸雄さん、益川敏英さん 2014年11月26日 大学入試の英語が大きく変わりそうだ。文部科学省は「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を測る方式にかじを切ろうとしている。この改革はいったい何のためなのか。そもそも…
- (文化の扉)はじめての丸山眞男 歴史に見る「いま」、未来を切りひらく 2014年10月20日 「戦後日本を代表する知識人」といわれる丸山眞男。厳格な学者というイメージだが、実際は、おしゃべりでユーモアに満ちていた。生誕百年の今年、様々な先入観を抜き…
- 物語、「他者に成る」力与えてくれる アンデルセン賞・上橋さん、式典で語る (写真キャプション)授賞式であいさつする作家の上橋菜穂子さん=メキシコ市 「児童文学のノーベル賞」と言われる国際アンデルセン賞の授賞式が10日、メキシコ市であり、同賞…
- 引用句辞典 トレンド編 匿名性の原則が阻む “きずな”の構築 鹿島茂[ぼっち席] 「君はまだぼくには、ほかの十万人の子どもとまるで違いがない子どもさ。だから、ぼくは君がいてもいなくても気にしない。君のほうでも、君はぼくがいてもいなくても気にしな…
松田美佐『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア』中公新書、読了。「根も葉もない」とも「火のないところに煙は立たぬ」と両義性をもって扱われるのがうわさ。対極の受容ながらどこか今ひとつわかりにくい。本書は古典的研究を踏まえた上で「…
河添房江『唐物の文化史 舶来品からみた日本』岩波新書、読了。唐物とはもと中国からの舶来品を指す言葉で、転じて広く異国からもたらされた品を指す。本書は、古代から現代まで、唐物というモノを通して日本文化の変遷を問う一冊。日本人はなぜ舶来品が好き…
ミシェル・ヴィノック(大嶋厚訳)『フランスの肖像 歴史・政治・思想』吉田書店、読了。「フランスについて、簡単に説明していただけますか」。本書は、フランス近現代史の大家がその疑問に答える「フランス入門」。「フランス国民はフランスの存続を望んで…
岡田温司『黙示録 イメージの源泉』岩波新書、読了。禍々しいイメージがつきまとう黙示録だが、本来の意味は「秘密のヴェールが剥がれること」。一体、どのような書物なのか。そしてその思想やイメージはどう育まれてきたのか。本書はテクストに忠実に寄り添…
猪谷千香『つながる図書館 コミュニティの核をめざす試み』ちくま新書、読了。24時間貸し出し可能な図書館から米粉ベーカリーを貸し出す図書館まで。これまで公共図書館は「無料貸本屋」と批判を受けてきたが、今、図書館に変化が起こっている。私たちの暮…
- 女川の獅子舞 人類は共同体を維持するために、文化、芸術活動を、どうしても必要としてきた。それはなぜか? たとえば、今回の震災においても、宮城県女川町から以下のような報告があった。 女川は、入り江が入り組んでいることもあり、最大四十三メートル…
- かつては、県庁所在地レベルの地方都市なら、変わった並びの書籍や古本屋が何軒もあったはずだ。商店街の店舗の多くは家賃を払わなくていい環境にあるから、日銭さえ入って来れば、どうにか商売は続けられる。街の本屋は雑誌を売って生計を立て、あとは好…
- 大阪市における文楽問題は、アートマネジメントの世界に大きな波紋を呼んだ。 権力者が恣意的に、自分が見て「つまらない」「わからない」と感じたという理由だけで(あるいは、その発言をたしなめられたことに幼稚に反発して)、ある特定の芸術分野や団体…
大塚ひかり『本当はひどかった昔の日本』新潮社、読了。「昔は良かった」と誰もが言うが、本当に昔の日本は良かったのか。本書は古典を材料にその内実をユーモアに検証する。「古典ってワイドショーだったんですね!」(帯)。昔は良かったwとは大嘘。 『源…
立木康介『露出せよ、と現代文明は言う 「心の闇」の喪失と精神分析』河出書房新社、読了。全てを晒そうとする欲望と内面の露出が人間を突き動かしている。現代文明の特徴とは「露出」ではないか−−挑発的な現代批評だが肯きながら読んだ。躍起になってベール…
細馬宏通『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか アニメーションの表現史』新潮社、読了。世界で初のアニメーションは『愉快な百面相』(1906年)。3分の作品は黒板に描かれたチョーク画だった。黒板の絵が動く。最初期のアニメはヴォードヴィルの「チョーク・…
ロバート・イーグルストン『ホロコーストとポストモダン 歴史・文学・哲学はどう応答したか』みすず書房、読了。アドルノを引くまでもなくホロコーストは歴史・文学・哲学」を一変させた。その証言やテクストと論争、それをどのように「読む」のか。本書は、…
- そして名画があった:/97 バルジ大作戦=玉木研二 /東京 毎日新聞 2013年11月21日 地方版 ◇ヒトラーの成算なき賭け 本土空襲も広がり、戦局悪化の一途をたどっていた1944(昭和19)年12月20日。毎日新聞の第1面(といっても、当時は統制下で…
小林秀雄『読書について』中央公論新社、読了。「読書の最初の技術は、どれこれの別なく貪る様に読む事で養われる他はない」。表題エッセーをはじめ、「読む」ことと「書く」ことにテーマ絞ったアンソロジー。巻末には対談「教養ということ」(田中美知太郎…
- 文化 映画『ハンナ・アーレント』を観て 鈴木道彦 考える力は善悪・美醜を見分ける ユダヤ人を絶滅収容所に送ったアイヒマン ハンナ・アーレントは、一九〇六年にドイツに生まれたユダヤ系の政治思想家である。若いときに哲学者のハイデガーやヤスパースに…
- パリ大全 エリック・アザン著 杉村昌昭訳2013年8月25日 ◆積み重なる時と人を透視 [評者]雑賀恵子=評論家 整備中の新橋−虎ノ門を通る環状2号線(新虎通り)が「シャンゼリゼ通り」になるという。いや、それを手本に、歩道の幅を最大級に広げ、街路樹や…
- 今週の本棚・新刊:『魯山人の世界』=白崎秀雄・著毎日新聞 2013年08月25日 東京朝刊 (ちくま文庫・1050円) 生前は「この上なく嫌い」だったが、死後に「地下の魯山人(ろさんじん)が仕掛けて来る蠱惑(こわく)にしたたかまどわされ、酩酊(めいて…
- 笑いの日本文化 樋口和憲 著 2013年7月28日 ◆平安をもたらす役割 [評者]飯島吉晴=天理大学教授、民俗学 現在、テレビにはお笑い番組が氾濫(はんらん)しており、この浅薄で孤独な「笑い」の商品が大量に制作され消費されているが、一方で日常生活から…
- 今週の本棚:若島正・評 『粋人粋筆探訪』=坂崎重盛・著 毎日新聞 2013年07月28日 東京朝刊 (芸術新聞社・2520円) ◇忘れさられた“遊び心の時代”を逍遥する 古本屋巡りをするおもしろさの一つは、気の向くままに雑本を買っていると、いつしかそれが何…
- 今週の本棚・本と人:『東京国立博物館の名品でたどる 書の美』 著者・島谷弘幸さん 毎日新聞 2013年07月28日 東京朝刊 (毎日新聞社・2415円) ◇書は読めなくても楽しめる−−著者・島谷弘幸(しまたに・ひろゆき)さん 毎日新聞日曜版の連載「書の美」…
- 今週の本棚:養老孟司・評 『ウェブ文明論』=池田純一・著 毎日新聞 2013年07月07日 東京朝刊 (新潮選書・1575円) ◇生きて変化するアメリカ現代社会のスケッチ これはウェブを創りだし、さらにそれを最大限に利用することで、いまも変化しつつある米…
- 性欲の研究―エロティック・アジア [編]井上章一 [掲載]2013年06月30日 [ジャンル]社会 編者と鹿島茂による巻頭対談で、オタクの元祖として名挙げされたプルースト。『失われた時を求めて』に登場する、眠る少女を思うさま観察するイメージは川端康成の中で…
- 【書評】字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記 太田直子 著 2013年6月30日 写真 ◆台詞と人生を磨く [評者]中条省平=フランス文学者 じつに面白い本だ。技術論として、言語論として、人生論として。 技術論というのは、本書は映画の字幕がどのように作られるかを…
- おかしなジパング図版帖―モンタヌスが描いた驚異の王国 [著]宮田珠己 [評者]三浦しをん(作家) [掲載]2013年06月16日 [ジャンル]アート・ファッション・芸能 ■こんなお辞儀見たことないよ 図版がたくさんの楽しい本。なんの絵が載っているかというと、主に…