覚え書:「今週の本棚・新刊:『領土という病 国境ナショナリズムへの処方箋』=岩下昭裕・編著」、『毎日新聞』2014年08月10日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『領土という病 国境ナショナリズムへの処方箋』=岩下昭裕・編著
毎日新聞 2014年08月10日 東京朝刊
(北海道大学出版会・2592円)
北方領土問題で発言してきた政治地理学者らのシンポジウムを軸に、国境地域にこだわる研究者やジャーナリストらの対談などを集めた。
国民国家、主権国家は近代以降作られた物語に過ぎない、との議論が一部で流行してから約20年。否定するにせよ、肯定するにせよ、人文書の読者層などには、おおむね定着したであろう考え方だ。ところが、近年、このフィクションを大まじめに振りかざしてほえる本が多数刊行され、売れているのはご存じの通り。この強硬なナショナリズムの暴風を吹かせたネタの一つが、竹島や尖閣諸島などの領土問題だろう。
もはや国民国家批判は、「知識人」による観念のお遊びに過ぎないのだろうか。そこで本書は、主権や領土が自明ではない事実を例示してくれる。たとえば携帯電話の通話。対馬の北端では韓国、与那国島の西端では台湾を経由してしまうとか。
北方領土問題を取材してきた北海道新聞の本田良一、毎日新聞で根室に約25年いる本間浩昭という2人の現場記者と元朝日新聞主筆、若宮啓文の座談会も良い。論壇誌の本格的な特集のように、充実した読後感を覚えた。(生)
−−「今週の本棚・新刊:『領土という病 国境ナショナリズムへの処方箋』=岩下昭裕・編著」、『毎日新聞』2014年08月10日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140810ddm015070037000c.html