覚え書:「盲目的な恋と友情 [著]辻村深月」、『朝日新聞』2014年08月10日(日)付。
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盲目的な恋と友情 [著]辻村深月
[掲載]2014年08月10日 [ジャンル]文芸
見る者を圧倒するほど美しい蘭花(らんか)と容姿への引け目を抱える留利絵、同じ大学の管弦楽団に所属する2人の女性の、それぞれの目から描く、関係への執着と承認願望のドラマ。美しいがゆえにうぶな蘭花は、才能に自信満々な若い指揮者と恋に落ちる。女性のドロドロに通じている著者は、冷淡でわいせつで、それゆえ魅力ある男の造形も達者だ。そんな彼が崩れ、愚劣さを露呈していく。色悪と離れられない美女を素材に、非美女が盛り上げる「友情ファンタジー」が読ませどころ。それは不協和音とグロテスクな形態に満ちている。が、また「ありがちなもの」とも見える。抜け道の乏しい社会。固くセットされた関係性は容易に怪物化する。
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新潮社・1620円
−−「盲目的な恋と友情 [著]辻村深月」、『朝日新聞』2014年08月10日(日)付。
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