覚え書:「今週の本棚・新刊:『ジェントリフィケーションと報復都市』=ニール・スミス著」、『毎日新聞』2014年08月24日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『ジェントリフィケーションと報復都市』=ニール・スミス著
毎日新聞 2014年08月24日 東京朝刊

 (ミネルヴァ書房・6264円)

 ジェントリフィケーションとは、比較的貧困層が多く「停滞」してきたとされる大都市中心部が、再開発などで「再活性化」されること。こうした、都心に高層マンションが増えたり、下町が観光スポット化したり、芸術家の活躍の場となって、街が「きれい」になる例は日本でも近年少なくない。その裏で、従来の住民の姿は見えなくなり、以前の地域文化が失われるといった事態も進む。このジェントリフィケーションを、資本の動向を軸に分析した。

 一般に、ジェントリフィケーションの理由は、中間層の住宅の都心回帰など、ライフスタイル、消費サイドの変化が強調されがち。他方で本書は、郊外開発が利潤を生み出せなくなり、相対的に利潤の余地が残る都心部へ資本が回帰するなど、供給面を理由とする。また、ジェントリフィケーションが野宿生活者の排除や排外主義などを伴う構図も描く。

 訳者は人文地理学者。大阪でホームレスのテントの強制撤去などを見て、その背景を考えようと翻訳を決意したとか。本書は欧米の都市を例にあげるが、日本の都市に焦点をあてた類書が出ることも期待したい。=原口剛訳(生)
    −−「今週の本棚・新刊:『ジェントリフィケーションと報復都市』=ニール・スミス著」、『毎日新聞』2014年08月24日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140824ddm015070048000c.html





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