覚え書:「今週の本棚・新刊:『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』=佐々涼子・著」、『毎日新聞』2014年08月24日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』=佐々涼子・著
毎日新聞 2014年08月24日 東京朝刊
(早川書房・1620円)
東日本大震災が起きた時、新聞用紙が不足して新聞各社は用紙確保に奔走した。同様に出版業界も紙不足に陥り、雑誌や書籍の発売延期や中止を余儀なくされた。この時初めて、各種印刷用紙の製造工場が津波被害などを受けた東北地方に集中していたことを認識した人々は多い。かく言う私もその一人だった。
日本製紙石巻工場(宮城県)はチラシ、出版用紙、コピー用紙など年間100万トンを生産。中でも出版用紙に関しては同社が全国で約4割の生産を担っていた。そんな拠点が津波に遭い、従業員が「工場は死んだ」と口にするほどの壊滅的な被害を受けた。しかし、「出版社が石巻を待っている」と、出版用紙の製造マシンを最優先に動かす決断をし、奇跡の復興をみせる。
従業員から社長まで当時の様子を丁寧に聞き取って、被災当日から復興までの過程を生き生きと記したノンフィクション。石巻工場は潰さないという決断、誰もが実行不可能と思った半年という復旧期限の設定、職人の意地と心意気。大げさな表現はせず粛々とつづるがゆえに、素直に頭が下がる。改めて出版文化を守る人々に思いをはせた。(無)
−−「今週の本棚・新刊:『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』=佐々涼子・著」、『毎日新聞』2014年08月24日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140824ddm015070046000c.html