覚え書:「フードトラップ―食品に仕掛けられた至福の罠 [著]マイケル・モス [訳]本間徳子 [評者]萱野稔人(津田塾大学教授・哲学)」、『朝日新聞』2014年08月31日(日)付。

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フードトラップ―食品に仕掛けられた至福の罠 [著]マイケル・モス [訳]本間徳子
[評者]萱野稔人(津田塾大学教授・哲学)  [掲載]2014年08月31日   [ジャンル]
 
■加工食品の「魔力」、取材で示す

 よく米国の食事情を表すときに、貧困層ほど肥満が多くエリートほど健康だ、ということが言われるが、はたしてそれは本当なのだろうか。本書を読むと、どうやらそれはある程度本当のようだ。スナック菓子や朝食用シリアル、清涼飲料水などの加工食品を製造している食品メーカーの幹部たちには、自分たちが手がけた商品を避ける食生活を送っている人が多いという。なぜ避けるのかといえば、それらの商品には、安価に食品の「魔力」を高めてくれる塩、脂肪、糖が大量に使われているからだ。塩は味蕾(みらい)の刺激を増大させるし、脂肪は食べる量がつい多くなるという作用をもつ。最も恐るべきは糖の作用だろう。糖は脳に興奮作用をもたらすからだ。脳のスキャンで調べると、糖に対する脳の反応は薬物への反応と類似していることがわかるという。これら三つを組み合わせて味覚の「至福ポイント」をみつけることが加工食品の開発だということを、本書は圧倒的な取材によって示す。
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 日経BP社・2160円 
    −−「フードトラップ―食品に仕掛けられた至福の罠 [著]マイケル・モス [訳]本間徳子 [評者]萱野稔人(津田塾大学教授・哲学)」、『朝日新聞』2014年08月31日(日)付。

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加工食品の「魔力」、取材で示す|好書好日





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マイケル モス
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