覚え書:「今週の本棚・新刊:『螺旋階段』=山本譲司・著」、『毎日新聞』2014年09月21日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『螺旋階段』=山本譲司・著
毎日新聞 2014年09月21日 東京朝刊
◇『螺旋(らせん)階段』
(光文社・1944円)
幸せとは何か。人生における充実感とはどういうものか。人間は社会とどうつながればいいか。家族はどうあるべきなのか。重いテーマを抱えた長編小説だ。
主人公は大手総合デベロッパーの都市開発企画部長。54歳の彼は社長にも買われ、時代の最先端で大都市をつくりかえるプロジェクトを順調に進めてきた。ところが、ある日、運命が暗転する。仕事が突然、うまくいかなくなる。信用していた取引相手に裏切られるのだ。次男には覚醒剤使用の疑いがかかり、警察に自宅を捜索される。そして、妻は身体に深刻な変調をきたしている。次から次に災難に襲われる主人公は、自身も健康を壊しながら、これまでの軌跡を振り返り、さまざまに自問することになる。
目に見えない大きな力に翻弄(ほんろう)されながらも、必死に生きる主人公夫妻の肖像が印象的だ。著者は元衆議院議員。秘書給与詐欺事件で実刑判決を受けて服役した。受刑生活などを描いた『獄窓記』で新潮ドキュメント賞を受賞するなど注目されたが、ノンフィクションでは思いを書き尽くせないと小説執筆を始めたという。これが2作目になる。(重)
−−「今週の本棚・新刊:『螺旋階段』=山本譲司・著」、『毎日新聞』2014年09月21日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140921ddm015070059000c.html