覚え書:「今週の本棚・新刊:『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』=豊田正義・著」、『毎日新聞』2014年10月05日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』=豊田正義・著
毎日新聞 2014年10月05日 東京朝刊

 (講談社・1404円)

 舞台は戦争末期の沖縄。自然の洞窟、壕(ごう)(ガマ)が多数あって、米軍に追われた多くの民間人らが逃げ込み、亡くなった。今日までたくさんの遺品が見つかっている。著者はその中から三つのモノを取り上げた。

 母親が息子の卒業記念に贈った硯(すずり)。その親子は同じガマにいて、生死を分けた。あるいは少年兵の痛ましい最期を伝える目覚まし時計。さらに地元民の幸福な日常を記録したアルバムと、それを「戦利品」として本国に持ち帰った米兵。そして彼は六十余年ぶりに来日し、アルバムを遺族に返還した。それぞれのモノは無言だが、丹念な取材によって戦場の悲劇と狂気、さらにはヒューマニズムが浮き彫りになってゆく。

 著者は気鋭のノンフィクション作家。登場人物のモデルの中にはすでに亡くなっており、直接話を聞くことができない人もいる。このため一部フィクションの手法を使っている。しかし個々のエピソードは事実に基づいたという。戦争体験者たちが加速度的に少なくなっている。生の証言で戦争の実相を描くノンフィクションが曲がり角に直面する中、本書は新たな可能性を示唆している。(栗)
    −−「今週の本棚・新刊:『ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦』=豊田正義・著」、『毎日新聞』2014年10月05日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141005ddm015070051000c.html






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ガマ 遺品たちが物語る沖縄戦
豊田 正義
講談社
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