覚え書:「今週の本棚・新刊:『日本の年金』=駒村康平・著」、『毎日新聞』2014年10月19日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『日本の年金』=駒村康平・著
毎日新聞 2014年10月19日 東京朝刊

 (岩波新書・886円)

 2025年に戦後ベビーブームの「団塊の世代」が全員75歳を迎える日本。本格的な少子高齢社会に突入し、年金の支え手である現役世代の減少は避けられない。年金は今年、5年に1度の点検で「おおむね維持できる」と診断されたものの、将来世代の受給額は確実に減っていく。

 国民皆年金といえども、現実には数百万人もの未納・未加入者がいる。定額の国民年金保険料(14年度は月1万5250円)は、所得の低い人ほど負担が重くなる。保険料を十分払えず、老後は生活保護に頼らざるを得ない人も増えるだろう。

 本書では、国民年金非正規労働者にも厚生年金の輪を広げていくのを皮切りに、将来は全国民が同じ制度に加入して、所得に応じた負担をする仕組みへ移行させる改革案を提示している。根幹には「暮らしを支えるのに必要な最低限の所得を保障するのが年金」との考えがある。

 著者は、社会や経済の変化に応じて見直しを要する年金を「生き物」と語り、政治が目先の対策を繰り返すことを「年金制度の最大のリスク」と指摘する。各国の事例に基づく冷静な分析は、読者に年金を深く考えさせる一助となるだろう。(和)
    −−「今週の本棚・新刊:『日本の年金』=駒村康平・著」、『毎日新聞』2014年10月19日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141019ddm015070021000c.html


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