覚え書:「第68回読書世論調査:『嫌韓・嫌中』本に戸惑い 『美味しんぼ』表現に賛否(その2止)」、『毎日新聞』2014年10月26日(日)付。
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第68回読書世論調査:「嫌韓・嫌中」本に戸惑い 「美味しんぼ」表現に賛否(その2止)
毎日新聞 2014年10月26日 東京朝刊
◇閣僚の批判「不適切」6割 「配慮すべきだった」48%
「週刊ビッグコミックスピリッツ」に載った漫画「美味しんぼ」に、東京電力福島第1原発を訪ねた主人公らが鼻血を出す場面があり、4−5月に議論が起きた。風評被害や差別を助長するとの批判が出たが、経過を知っている人の6割が閣僚や自治体の首長の批判は不適切であると考えていた。
一連の経過を「知っている」人は8割近くおり、「知らない」人は2割だった。30代−50代は9割が知っていた。「知っている」と答えた人のうち、「この漫画の表現に問題はない」という人が26%なのに対し、「表現は被災地に配慮すべきだった」と感じた人は48%で2倍近くいた。「わからない」は19%だった。「配慮すべきだった」と答えた人の20%が60代で最も多かった。「問題はない」と答えた人のうち20代は8%だったが、40代は24%と3倍に上った。自由記述では、「表現すること自体は問題ではないが、絵で伝える漫画の影響力がすごいと思った」という意見もあり、漫画だからこその問題提起もあったといえそうだ。
この作品をめぐり、閣僚や自治体の首長が「風評被害を招く」「科学的根拠に乏しい」と批判した一方、権力者の批判は「自由な表現や議論を妨げる」といった反論が出た。閣僚や首長が批判したことについて「適切でない」と感じた人が57%だったのに対し、「適切だ」は38%。10代後半を除くと、ほぼすべての年代で6割近くが「適切でない」と答えた。ところで、実際どれくらいの人がこの時の「美味しんぼ」を読んだのだろうか。調査では男性の2割、女性の1割が「読んだ」と回答した。
◆この1カ月に読んだ週刊誌
◇「女性自身」22年連続首位
「この1カ月に読んだ週刊誌」(調査時点)を25誌から選んでもらったところ、「女性自身」が12%で最多。現在の質問形式にした1993年以降、22年連続トップとなった。
2位「週刊現代」(11%)、3位「週刊文春」(10%)は昨年と同じ。「文春」が女性にも読まれているのに対し、「現代」は圧倒的に男性読者が多く、特に70歳以上の男性の3割が読んでいるのが際立った。同誌が力を入れている高齢者向けの性特集の人気とマッチする格好だ。
4位は、単行本が累計3億冊を突破した「ONE PIECE(ワンピース)」を連載する「週刊少年ジャンプ」が昨年8位から4位にジャンプ。5位「女性セブン」、6位「週刊新潮」と続いた。
電子書籍を読んだことがある人は21%となり、「電子書籍元年」と呼ばれた2010年以降の調査で初めて2割を超えた。人気ジャンルは漫画。読んだ人のうち7割がスマートフォンを利用していた。新しい読書のスタイルが広がりつつあるようだ。
「電子書籍を読んだことがある」人の割合は、12年14%、13年17%と年々増加。「読んだ人」を年代別にみると、20代では50%が読み、30代39%、10代後半34%と続く。
読んだ作品のジャンルでは、前年比5ポイント増の漫画がトップの66%。小説56%、雑誌26%、新聞23%と続き、いずれも前年と比べほぼ横ばいだった。16%が読んだビジネス書は、12年から微増傾向だ。
読んだ人が利用した端末は、スマホが73%と他を圧倒した。パソコン、「iPad」などのタブレット端末は共に3割、「キンドル」などの電子書籍専用端末は7%だった。
電子書籍を読んだ感想を尋ねると、「便利だと思った」が80%、「簡単だった」が69%に上り、利便性や操作性を評価。一方で「目が疲れた」は50%、「読みにくかった」は37%だった。電子書籍を読んでいる人でも半数が「紙の本がいい」と感じており、「電子書籍がいい」と答えたのは1割に満たない。
◆1人当たり本の購入費
◇消費増税で減少
4月の消費増税で本の購入費は「変えていない」人が8割を超えた。「減らした」人が13%だったのに対し、「増やした」人は1%。差が12ポイントもあるので「増やした」人がよほど高額な購入をしていない限り、全体として本の購入費は減ったことになる。
本の購入額が本当に減ったかをみるため、1カ月間の本の平均購入費を、2013年の調査と比べてみた。「4000−5000円未満」「5000円以上」などの購入額が高い層がともに1ポイント減っている一方、「本は買わない」「1000円未満」の低い層は、それぞれ2ポイント増えている。
高額購入層の減り方は小幅ながら金額的には大きな影響があるので、1人当たりの購入費は前年より減少したことになる。
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◇読書世論調査15年版 報告書、来春に発行
第68回読書世論調査の詳報を「読書世論調査2015年版」として来春、毎日新聞社から発行する予定です。全国学校図書館協議会と共同実施した第60回学校読書調査(27日朝刊に結果を掲載予定)の詳報も収録します。
1部3240円(税、郵送料込み)。購入希望者は〒100−0003 東京都千代田区一ツ橋1の1の1 毎日企画サービスに、ファクス(03・3213・6476)、もしくはホームページ(http://mainichi-ks.co.jp/m-research/)でお申し込みください。代金後払いで、報告書を発送する際、郵便振替用紙を同封します。バックナンバーもあります。問い合わせは毎日企画サービス(電話03・3212・0403)。
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【1カ月に読んだ週刊誌トップ15】
全体 男性 女性
(1) (1)女性自身 12 2 21
(2) (2)週刊現代 11 17 5
(3) (3)週刊文春 10 12 8
(4) (8)週刊少年ジャンプ 9 14 4
(5) (5)女性セブン 9 2 15
(6) (4)週刊新潮 8 10 7
(7) (6)週刊朝日 7 9 6
(8) (7)週刊女性 7 1 12
(9)(15)FRIDAY 5 8 2
(10)(11)TVガイド 5 5 5
(11)(13)サンデー毎日 5 6 3
(12) (9)週刊ポスト 5 8 1
(13)(11)週刊少年マガジン 4 8 1
(14)(10)日経ビジネス 4 6 2
(15)(16)an・an 3 0 6
*複数回答。数字は%。同率は回答者が多い方を上位にした。かっこ内は昨年の順位。
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■主な質問と回答
◆最近の図書館は、ベストセラーなど人気の高い本をたくさん購入し、貸し出しています。この傾向をどう思いますか。
全体 男性 女性
好ましい 59 53 64
好ましくない 8 10 7
わからない 31 36 27
◇<「好ましい」と答えた人に>好ましいと考える理由はどれですか。(いくつでも)
無料でベストセラーが読めるから 66 62 70
図書館の役割は多くの人が読みたい本をそろえることだから 68 68 67
図書館は書店に代わる役割を果たすべきだから 8 9 7
活字文化を広めることになるから 39 35 42
その他 4 3 5
◇<「好ましくない」と答えた人に>好ましくないと考える理由はどれですか。(いくつでも)
地域の書店で本が売れなくなるから 32 32 32
図書館の役割は長く読まれる本をそろえることだから 56 53 59
人気の高い本が多くなり図書館の蔵書が偏るから 55 53 57
出版文化に打撃を与えるから 20 19 21
その他 11 12 8
◆広島での被爆体験を経て成長する少年を描いた漫画「はだしのゲン」に、残虐な場面があるとして、学校図書館での閲覧を制限した小中学校がありました。「はだしのゲン」を読んだことがありますか。
ある 49 54 45
ない 49 44 53
◆小中学生が「はだしのゲン」を読むことは問題だと思いますか。
問題だ 3 4 2
問題ない 85 87 84
◆「はだしのゲン」を小中学校の図書館で閲覧制限することは問題だと思いますか。
問題だ 40 43 37
問題ない 47 45 50
◆「週刊ビッグコミックスピリッツ」に載った漫画「美味しんぼ」に、主人公が東京電力福島第1原発を訪ねた後に鼻血を出す場面がありました。これが、被ばくによるものかどうかをめぐり4月から5月にかけて議論が起きました。この出来事を知っていますか。
知っている 77 78 76
知らない 22 21 23
◇<「知っている」と答えた人に>この漫画について、どう思いますか。
この漫画の表現に問題はない 26 30 21
表現は被災地に配慮すべきだった 48 48 49
わからない 19 16 22
その他 6 6 6
◇<「知っている」と答えた人に>この作品には、閣僚や自治体の首長から「風評被害を招く」「科学的根拠に乏しい」と批判が寄せられました。それに対して「自由な表現や議論を妨げる」「行政は説明責任を果たしていない」といった反論がありました。閣僚や自治体の首長がこの作品を批判したことをどう思いましたか。
適切だ 38 39 38
適切でない 57 58 56
◇<「知っている」と答えた人に>この時の「美味しんぼ」を読みましたか。
読んだ 15 19 11
読んでいない 85 81 88
◆表紙や挿絵にアニメ調のイラストをあしらい、主に若者向けに書かれた「ライトノベル」と呼ばれる小説が人気です。これらの本を読んだことがありますか。
読んだことがある 12 11 14
知っているが、読んだことはない 29 28 29
知らないし、読んでいない 58 60 56
◆携帯端末やパソコンなどで本が読める「電子書籍」が話題になっています。あなたは電子書籍を読んだことがありますか。
読んだことがある 21 20 21
読んだことがない 78 79 78
◇<「読んだことがある」と答えた人に>どんな電子書籍を読んだことがありますか。(いくつでも)
小説 56 53 59
漫画(コミック) 66 68 65
ノンフィクション 10 10 10
ビジネス書 16 23 10
図鑑 7 8 7
児童書・絵本 7 3 9
実用書 14 15 13
新聞 23 28 18
雑誌 26 27 25
その他 2 3 2
◇<「読んだことがある」と答えた人に>読んだ感想は次のどれですか。
●便利さ
便利だと思った 80 77 83
不便だと思った 3 5 2
どちらでもない 16 18 14
●読みやすさ
読みやすかった 29 31 27
読みにくかった 37 34 40
どちらでもない 33 34 32
●目の負担
目にやさしかった 6 8 4
目が疲れた 50 44 56
どちらでもない 43 47 39
●使いやすさ
簡単だった 69 70 68
難しかった 3 3 3
どちらでもない 27 27 28
●読む手段
紙の本がいい 54 51 57
電子書籍がいい 8 10 6
どちらでもない 37 38 35
◇<「読んだことがある」と答えた人に>どんな端末で読みましたか。(いくつでも)
パソコン 30 35 25
スマートフォン 73 68 77
タブレット端末 29 34 24
電子書籍専用端末 7 8 6
◇<「読んだことがない」と答えた人に>これから、電子書籍を読んでみたいと思いますか。
読みたいと思う 26 25 26
読みたいと思わない 74 74 74
◇<「読みたいと思わない」と答えた人に>読みたいと思わない最も大きな理由は次のどれですか。
持ち運びに気を使いそうだから 3 3 2
使い方が難しそうだから 8 9 8
値段が高いから 3 4 2
目が疲れるから 26 22 31
紙の本に愛着があるから 35 37 34
どんなものかわからないから 22 23 21
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(注)数字は%。小数点以下は四捨五入。無回答は省略。複数回答は合計が100%を超える。0は0.5%未満。
◇調査の方法
全国300地点で16歳以上(9月末現在)の男女計3600人を住民基本台帳から層別2段無作為抽出法で抽出。7月30日に質問用紙を郵送し9月末までに2485人から回答を得た。うち代理回答などを除いた有効回答は2406人で、回答率は67%。内訳は男性48%、女性52%。年代別では、10代後半4%▽20代11%▽30代15%▽40代17%▽50代14%▽60代19%▽70歳以上20%。
−−「第68回読書世論調査:『嫌韓・嫌中』本に戸惑い 『美味しんぼ』表現に賛否(その2止)」、『毎日新聞』2014年10月26日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20141026ddm010040052000c.html