覚え書:「第68回読書世論調査:『嫌韓・嫌中』本に戸惑い 『美味しんぼ』表現に賛否(その1)」、『毎日新聞』2014年10月26日(日)付。

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第68回読書世論調査:「嫌韓・嫌中」本に戸惑い 「美味しんぼ」表現に賛否(その1)
毎日新聞 2014年10月26日 東京朝刊

 毎日新聞の「第68回読書世論調査」では、小中学校での閲覧制限の是非が問われた漫画「はだしのゲン」、原発事故と鼻血の描写が議論になった漫画「美味(おい)しんぼ」、相次ぐ「嫌韓・嫌中」本・記事など社会的なテーマについて意見を聞いた。また、4月の消費増税電子書籍の浸透によって本やメディアの利用がどのように変化しているかを探った。【今村茜、中村美奈子、大隈慎吾、扇沢秀明、浜田和子、山田道子】

 ◇半数が「関係悪化」を心配 「読んだ」45%は60代以上

 韓国や中国を批判する「嫌韓・嫌中」の本が相次いで出版され、一部の雑誌では特集が組まれた。特設コーナーを設ける書店もあり、ブームの様相を呈している。これらを読んだことがあるのは13%だった。また、2人に1人は、売れていることで「日本と韓国・中国との関係を悪化させる」と考えていた。

 読んだことのない人は86%。調査対象の16歳以上の人口は約1億1000万人なので、約1430万人が「嫌韓・嫌中」本・記事を読んだことになる。読んだ人のうち、45%が60代以上で、10代後半は3%、20代は8%だった。

 「嫌韓・嫌中」本・記事を読んだ人を分析してみると、8割は普段から本や新聞を購読。読んでいない人に比べ、歴史や地理の本を好み、電子書籍の読書経験も多かった。週刊誌を読む人が多く、調査時期の1カ月間に読んだ雑誌は、「週刊文春」25%、「週刊新潮」23%、「週刊現代」21%だった。1カ月の本の購入費が平均で3000円以上と答えた人の割合は、読んでいない人の約3倍。読んだ後の両国へのイメージは「変わらない」(50%)、「悪くなった」(48%)が並んだ。

 読む読まないを問わず、売れていることをどう考えるか複数回答で尋ねると「日本と韓国・中国との関係を悪化させる」49%▽「韓国・中国への不安や不満を代弁している」30%▽「売れているのは嘆かわしい」18%▽「日本への不安や不満のはけ口になっている」17%−−の順。

 自由記述では、「中国、韓国の方がさらにひどい反日記事を書いているから、やり返してよい」など肯定的な意見がある一方、「国と国との問題なのに、記事によって差別がおこる」という批判的な意見も。「ブームに踊らされている」「真実がどれかわからない」と、戸惑う声も見られた。

 出版科学研究所の佐々木利春主任研究員は、「嫌韓・嫌中本は固定層が購入しているようだ。次々と同じような本が出版されているが、読者が決まっているのでミリオンセラーにはなりにくい」と分析する。

 ◇読書率は昨年より微減 新聞は4ポイントダウン65%

 読書率はいずれも微減した。普段、書籍を「読む」と答えた人は52%、雑誌を「読む」人は49%。書籍か雑誌のいずれかを読んでいる人の割合を示す総合読書率は69%。書籍、雑誌、総合とも昨年より2ポイント減った。

 1日の平均読書時間は書籍が昨年より1分減って30分、雑誌が1分増えて18分。両方を合わせた平均読書時間は、昨年と同じ48分だった。

 新聞を「読む」は昨年より4ポイント減って65%になった。テレビを「見る」は1ポイント減の94%、ラジオを「聴く」は37%で昨年と横ばい。インターネットを「する」人は61%で、昨年より4ポイント増えた。

 昨年から調査方法が面接から郵送に変わったため単純に比較はできないが、ここ5年間を見ると、新聞は2010年74%、11年75%、12年73%と12年までは7割台で推移していた。ネットだけは10年の48%から上昇を続けており、退潮傾向の新聞に並びそうな勢いだ。

 ◆1カ月の平均読書量

 ◇漫画と週刊誌除き微減

 1カ月の平均読書量は、週刊誌と漫画本以外は微減した。単行本の読書量は月に0・9冊、文庫・新書は0・7冊で、昨年よりそれぞれ0・1冊減った。雑誌は週刊誌が昨年と同じ1・1冊、月刊誌は0・5冊で昨年より0・1冊減った。漫画本は昨年と同じ1・1冊、ビデオ・DVDは0・2本減の2・4本だった。

 どんなジャンルの本(雑誌、漫画を除く)を読むか複数回答で聞くと、トップは「趣味・スポーツ」の52%で、昨年と順位も率も同じだった。読むジャンルは男女差が大きい。男性は(1)趣味・スポーツ61%(2)日本の小説39%(3)歴史・地理28%で、昨年と同じ順。女性は(1)暮らし・料理・育児65%(2)健康・医療・福祉47%(3)日本の小説46%で、昨年と1位は変わらず、2位、3位が入れ替わった。

 ◇図書館の人気本購入に好感

 公立図書館では人気本へ予約が殺到。資料費予算が削減される中、購入冊数の上限を決めたりして対応している。図書館が人気本をたくさん購入する傾向については、「好ましい」が6割で「好ましくない」は1割だった。「好ましい」という人は、女性のほうが多く、若いほどその傾向が強かった。

 「好ましい」理由は、「図書館の役割は多くの人が読みたい本をそろえることだから」(68%)と「無料でベストセラーが読めるから」(66%)が多かった。「好ましくない」理由では、「図書館の役割は長く読まれる本をそろえることだから」(56%)と「図書館の蔵書が偏るから」(55%)が並んだ。

 本や雑誌の主な入手先は、大規模書店30%▽中小書店25%▽コンビニ、スーパー内の書籍・雑誌コーナー15%の順。図書館は4位9%で、インターネットの書店の6%を上回った。主に図書館で本を入手する人の8割が、図書館の人気本大量購入を好ましいとした。

 ◇読んだ 整理整頓本2割、ライトノベル1割

 「人生がときめく片づけの魔法」は続編が出され、「親の家を片づける」は「親家片(おやかた)」という言葉をはやらせた整理整頓本。手に取ったりしたことがあるのは2割だった。

 主な読者層は40−50代の女性で約4割が読んでいた。読んだりした人のうち「実行し、ためになった」が38%、「実行していないが、ためになった」が54%で、何らかの形で役立ったようだ。

 表紙や挿絵にアニメ調のイラストを使った若者向け小説「ライトノベル」(ラノベ)は今や一大ジャンルだが、読んだことがある人は1割にとどまった。「知っているが、読んだことはない」は3割、「知らないし、読んでいない」が6割だった。年齢別では、10代後半の37%が読んでおり、20代の33%、30代の20%、40代の15%、50代の8%と年齢とともに減少。ただ、50代の「読んだことがある」と「知っているが、読んだことはない」を足すと5割近くになり、認知度はある。

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 ■主な質問と回答

 ◆どんなジャンルの本(雑誌・漫画を除く)を読みますか。(いくつでも)

                     全体 男性 女性

宗教・哲学・倫理             13 14 13

歴史・地理                21 28 14

自然科学・環境              12 18  7

経済・産業・マネー            18 27  9

社会                   12 18  7

政治                    9 15  5

健康・医療・福祉             38 27 47

趣味・スポーツ              52 61 44

暮らし・料理・育児            40 13 65

日本の小説                42 39 46

外国の小説                13  9 16

写真集                  11 10 12

エッセー・詩・短歌・俳句         15  9 20

ノンフィクション             18 17 19

児童書・絵本               14  4 23

その他                   5  5  5

 ◆本(雑誌・漫画を含む)の購入費は1カ月に平均でどれくらいですか。

1000円未満              37 33 40

1000−2000円未満         27 28 27

2000−3000円未満         12 13 11

3000−4000円未満          4  5  3

4000−5000円未満          2  3  1

5000円以上               2  3  2

本は買わない               15 14 15

 ◆今年4月に消費税が8%に引き上げられました。増税後、本(雑誌・漫画を含む)の購入費をどうしましたか。

増やした                  1  1  0

減らした                 13 11 16

変えていない               82 84 80

 ◆本や雑誌を主にどこで(あるいはどんな方法で)入手しますか。

大規模書店                30 30 30

中小書店                 25 25 25

新古書店(リサイクル書店)         4  4  3

古本屋                   2  2  2

駅の売店                  0  1  0

コンビニ、スーパー内の書籍・雑誌コーナー 15 16 14

インターネットの書店            6  6  6

図書館で借りる               9  7 11

他人から借りる、もらう           4  3  4

 ◆本を読む動機は何ですか。(いくつでも)

感動したり楽しんだりするため       62 55 68

体験できない世界にひたれるから      32 29 35

仕事や勉強に必要な知識が得られるから   50 52 48

同僚や友人との話題についていくため    13 15 11

好きな作家の作品を読みたいから      31 26 35

その他                   9  8 10

 ◆「人生がときめく片づけの魔法」や「親の家を片づける」「トヨタの片づけ」など、整理整頓について書かれた本が人気です。これらの本を読んだり、書店で手に取ったりしたことがありますか。

ある                   20  9 29

ない                   79 90 70

 ◇<「ある」と答えた人に>これら整理整頓について書かれた本を読みどうしましたか。

実行し、ためになった           38 39 38

実行したが、ためにならなかった       3  4  3

実行していないが、ためになった      54 52 54

実行していないし、ためにならなかった    4  5  4

 ◆韓国や中国を批判し問題点を指摘する、いわゆる「嫌韓」「嫌中」本が出版され、雑誌では「嫌韓」「嫌中」記事が掲載されています。これらを読んだことがありますか。

ある                   13 18  9

ない                   86 81 90

 ◇<「ある」と答えた人に>「嫌韓」「嫌中」の本や記事を読んで、韓国、中国へのイメージはどうなりましたか。

よくなった                 1  1  1

悪くなった                48 44 55

変わらない                50 55 43

 ◆「嫌韓」「嫌中」本や、「嫌韓」「嫌中」記事が載った雑誌が売れていることをどのように考えますか。(いくつでも)

日本と韓国・中国との関係を悪化させる   49 46 52

韓国・中国より日本が良い国だと広めている 12 14 10

韓国・中国への不安や不満を代弁している  30 33 26

日本への不安や不満のはけ口になっている  17 18 16

出版業界はもうけ主義に走っている     14 15 14

売れているのは嘆かわしい         18 18 18

売れているのは喜ばしい           5  8  3

その他                  15 14 15
    −−「第68回読書世論調査:『嫌韓・嫌中』本に戸惑い 『美味しんぼ』表現に賛否(その1)」、『毎日新聞』2014年10月26日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141026ddm010040050000c.html






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