覚え書:「(時代を読むこの3冊)差別、まず知ることから 本田由紀」、『朝日新聞』2014年10月26日(日)付。

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(時代を読むこの3冊)差別、まず知ることから 本田由紀
2014年10月26日



 ◇10代の読書 ブックサーフィン

 人が、人の集団に対して向ける差別や憎悪は、ほんとうに根深い問題です。それは多かれ少なかれどこの社会にもありますし、また、私もあなたもどんな人でも、差別する側/差別される側になってしまうことを免れてはいません。この国も、歴史的経緯の中で、いくつもの差別問題を抱え込んできました。

 典型的な問題の一つが、部落差別です。この差別は、日常生活ではそれほど目立つことがなくなっても、特定の地域や、あるいは結婚の際などに、黒々と浮上します。上原善広『路地の教室』(ちくまプリマー新書)は、当事者として肌で感じる「路地」(同和地区や被差別部落)の温感や、その地域間の違い、歴史的背景などを、噛(か)み砕いた言葉で伝えてくれます。他者のあり方に「気づき」、「イチから考える」ことで、差別を「寛解」に近づけることを、上原さんは提案しています。

 また、最近の日本で悪化している問題は、在日韓国・朝鮮人への差別発言です。特定の団体により、ひどい罵(ののし)りや実質的な嫌がらせを含むヘイトデモなどが繰り返し行われ、国連人権委員会から厳しい勧告を受ける事態になっていることは周知の通りです。政府が明確に差別とその担い手を批判する姿勢を示し、法整備を進める必要があります。加えて、「在日」の方たちの歴史的背景や置かれている状況を追体験する上で、金城一紀『GO』(角川文庫)は褪(あ)せぬ魅力をもつ小説です。これはフィクションですし、ある種のステレオタイプとも言えますが、主人公の悲しみと強さ、人を愛する気持ちに、共感する読者は多いでしょう。

 差別が経済や政治の利害に根を持つ場合、それはさらに惨(むご)いものとなります。安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)は、萎(な)えかけている日本の産業が、「研修生」などの外国人労働者の奴隷的な労働によってぎりぎり延命を図っていることを、えぐるような筆致で描いています。まず差別の事実をつぶさに知り、非を正してゆくことにしか、この社会が世界の中で生きてゆく道はありません。

 (東京大学教授〈教育社会学〉)
    −−「(時代を読むこの3冊)差別、まず知ることから 本田由紀」、『朝日新聞』2014年10月26日(日)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S11422268.html






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