覚え書:「本が結ぶ新たな出会い 大学図書館が取り組む『読書の秋』」、『朝日新聞』2014年11月14日(金)付。
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本が結ぶ新たな出会い 大学図書館が取り組む「読書の秋」
2014年11月14日
(写真キャプション)学生らが本棚に自由にコメントを記せる図書館=帝京大
読書の秋。けれど、学生の読書離れに危機感を抱く大学は少なくない。1日の読書時間がゼロの学生が4割を超えるとの調査もある。大学図書館はあの手この手で読書を勧めている。
■本棚に感想「落書き」
帝京大(東京都八王子市)は、学生や教員が本を自由に論評できる本棚を図書館「MELIC」(メディア・ライブラリー・センター)に設けている。色とりどりのチョークで自由に書き込みができ、一見すれば「落書き」と見まがう。
今月上旬、堀江貴文著「君がオヤジになる前に」に対しては、「迷える『君』に送る知恵とルール」などと書き込まれていた。施設の利用者が本を通してコミュニケーションを取るこうした手法を、同図書館では「共読」と呼び、2012年に導入した。
本棚には「New Books(旬のおすすめ)」「Career(キャリアを切り開くヒント)」「Life(人生を読み解く)」といったテーマも設け、学生を引きつけようとしている。
06年に新築した同図書館は、地上4階、地下1階の構造。自然光をふんだんに採り入れるしゃれた建物だが、学生1人あたりの貸出冊数は10年をピークに減っている。同図書館の中嶋康グループリーダーは「東日本大震災の影響で読書をする余裕がなくなったのかとも考えたが、その後も減少が止まらなかった。知的好奇心に働きかけなければと思って企画した」と話す。
著名人が学生の声に答える試みも12年から始めた。「留学したいと思っていますが、なかなか勇気が出ません」という女子学生の問いかけに、モデルの知花くららさんがアーネスト・ヘミングウェー著「移動祝祭日」を推薦。「語学ができるようになると旅がますます楽しくなりますよ。お好きなら飛び込んで!!」などとカードに記し、図書館に掲示された。次回はお笑いタレントの水道橋博士が回答する予定。
帝京大の図書館改革を支援するのは、書評家で「編集工学研究所」(東京都)の松岡正剛所長。松岡氏は、近畿大(大阪府東大阪市)が17年完成を目指す新図書館棟の計画にも加わる。
近畿大の新図書館は約25の小部屋で構成し、各部屋に「キーブック」(鍵となる本)と呼ぶ本と関連本を置くという。キーブックから学生を読書に誘導しようとの狙いだ。ファッション業界を参考に、「本のセレクトショップ」をイメージしている。近畿大の担当者は「必要なものはインターネットで手に入る時代だから、ネットでは得られない知識との出会いを提供したい」と話す。
「インターネットは情報を提供できても知性を育むことはできません。簡単には理解できない一流の知性とぜひ格闘して」。同志社大(京都市)の村田晃嗣学長はこう呼びかけ、教授陣が厳選した本を、今年度「同志社100冊」としてまとめた。ハーマン・メルビル著「白鯨」や新渡戸稲造著「武士道」、吉田兼好著「徒然草」など名作や古典が選ばれている。
■書店へ「選書ツアー」
図書館に置く本を学生自身で選ぶ――。神戸大(神戸市)は2010年から「学生選書ツアー」に取り組んでいる。「できるだけ色んな分野から選んでください」。10月下旬、神戸市の大型書店で、図書館職員の呼びかけに従って、学生8人が大きなカゴを手にフロアを歩き回った。
本の購入費は1人3万円前後。大学院で物理学を専攻する岩沢幸太朗さん(26)は、建築や映画の本などを選んだ。岩沢さんは「図書館で専門分野以外の本を読みたいと思ったのに、置いていないことが時々あったから選書ツアーに参加した」と話した。
図書館職員は「学生が選んだ本はやはり学生受けがいい。常に貸し出し中になっている」と言う。同書店の担当者は「大学の選書ツアーは増えている。大型書店がない県外から来るケースもある」と話す。
フェリス女学院大(横浜市)は02年度から「フェリスの一冊の本」と銘打ち、「読書運動プロジェクト」を進めている。各年度のテーマを学生が主体となって決め、読書会や作家のインタビューなどを企画。テーマに沿った授業もある。今年度のテーマは「女子が恋する現代日本文学〜男性作家編」。9月には芥川賞作家の藤沢周氏を招いた。
京都女子大(京都市)の図書館のカウンターには、そろいのピンクのジャンパーを着た学生が座っている。12年度に発足した「図書活スタッフ」で、図書館に関わる学生の質問や要望に応えている。
スタッフは33人で、お薦めの本にコメントを付けて並べるコーナーを作ったり、図書館情報をまとめたニューズレター「図書活TIMES」を発行したりする。スタッフの佐々木亜樹さん(3年)は「図書館の職員には尋ねにくいことでも、同じ学生なので気軽に聞けるようです」と話す。
(浅倉拓也)
■読書時間「ゼロ」4割超
1日の読書時間(電子書籍を含む)が「ゼロ」と答えた学生が40.5%――。全国大学生活協同組合連合会が実施した2013年度の学生生活実態調査で、こんな結果が示された。現在の調査方法になった04年度以降、読書時間ゼロが4割を超えたのは初めてという。1日の読書時間の平均も26.9分と過去最短だった。
同連合会の担当者は「昔は通学途中の電車で本を開くなどしたものだが、いまの学生はスマートフォンで交流サイト(SNS)を見たりゲームを楽しんだりすることが多い。通学時間の使い方が大きく変わった」と分析する。
−−「本が結ぶ新たな出会い 大学図書館が取り組む『読書の秋』」、『朝日新聞』2014年11月14日(金)付。
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http://www.asahi.com/articles/DA3S11454197.html
同志社大学が選び抜いた同志社100冊(pdf)
→http://www.doshisha.ac.jp/attach/page/OFFICIAL-PAGE-JA-494/47771/file/no179.pdf