覚え書:「今週の本棚・新刊:『1968 パリに吹いた「東風」 フランス知識人と文化大革命』=リチャード・ウォーリン著」、『毎日新聞』2014年11月23日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『1968 パリに吹いた「東風」 フランス知識人と文化大革命』=リチャード・ウォーリン著
毎日新聞 2014年11月23日 東京朝刊

 (岩波書店・5184円)

 表紙はゴダールの映画「中国女」の一場面。パリ五月革命に象徴される1960年代後半の世界的な「叛乱(はんらん)の季節」。その時期に、フランスの知識人、学生の間で中国の文化大革命毛沢東がどう受容されたかを、アメリカ人研究者が記した。

 文化大革命の悲劇自体は、今更言うまでもない。だが、同時代のフランス(そして他の先進国)の一部の人々にとって、毛沢東の言葉は、硬直した自国の社会主義運動から自らを解き放ち、さまざまな可能性を生み出すものだった。彼らは、毛沢東思想から、文化の多様性や人々の差異を積極的に擁護する姿勢を結果として導き出した。毛沢東主義の雑誌から、移民労働者、フェミニストや同性愛者の運動が飛び出していく。

 その流れを、当時の運動組織、サルトルアルチュセールら大物知識人、現哲学者のアラン・バディウらも登場させつつ論じる。

 「68年」が「新しい社会運動」を生んだとの理解は先進国共通だ。本書は、そこにマオイズムという縦糸を通し、ある言説が状況と受け手によってどんな肯定的な可能性を持つかをも示すことに成功した。=福岡愛子訳(生)
    −−「今週の本棚・新刊:『1968 パリに吹いた「東風」 フランス知識人と文化大革命』=リチャード・ウォーリン著」、『毎日新聞』2014年11月23日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141123ddm015070015000c.html






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1968 パリに吹いた「東風」――フランス知識人と文化大革命
リチャード・ウォーリン
岩波書店
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