覚え書：「今週の本棚・新刊:『ナイスディール』＝町田哲也・著」、『毎日新聞』2014年11月23日（日）付。

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今週の本棚・新刊:『ナイスディール』＝町田哲也・著
毎日新聞　2014年11月23日　東京朝刊

　目次に「電話の音でオーダーを聞き分けること」「世間の常識を疑ってかかること」など１０カ条のディーラーになるための心得が並び、一見するとディーラーのためのハウツー本。だが中身は、大手証券マンの著者による経済小説だ。

　主人公は、証券会社で６年先輩の厳しい指導を受けながら、チームの一員として奮闘する社債ディーラー。チームは、若手ＣＥＯ（経営最高責任者）率いるＩＴベンチャーの社債を投資対象に決める。ＩＴ事業に次々と出資するファンドの将来性を市場が図りかねる中、チームはいち早く「買い」と判断し、値上がりを見越して社債を１００億円以上買い集める。しかし、ファンドが地方銀行買収に動くと徐々に雲行きは怪しくなり、社内でも厳しい目で見られるようになる。

　２００５年のニッポン放送買収に始まるライブドア騒動をほうふつとさせる展開。目にする機会のないディーリングルームの高揚感と緊迫感が、著者の経験を元にリアルに描かれる。目に見えないライバルと戦いながら、ディーラーがどんな材料で動き、いかに厳しい判断を瞬時に迫られるかが伝わってくる。（山）
　　　　−−「今週の本棚・新刊:『ナイスディール』＝町田哲也・著」、『毎日新聞』2014年11月23日（日）付。