日記:学問として全く根拠のない疑似科学の如き「人種(主義)」で人間を区分することの錯誤がちっとも認識できていないのが曽野綾子さん

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外電を駆けめぐった『産経新聞』連載の曽野綾子大先生のアパルトヘイト容認のコラム問題、ようやく『毎日新聞』が「まとめ」報道しました。

曽野綾子さんは、『毎日新聞』に弁明のコメントを寄せておりますが、基本的に「区別」は「差別」ではないという認識のご様子。

しかし、合衆国の黒人「差別」も「区別」という認識で遂行された訳でして、その虚偽がもう何十年も前から指摘されていることを踏まえるならば、公共媒体に「垂れ流し」て「個人的に思っている」ってことで不問に付すのはいかがなものかと思いますよ。

曰わく「南米には、日系人たちが集まって住んでいるコロニア(移住地)が、あちこちにありました。日本にも、自然発生的にできたブラジル人の多い町があると聞いています」だそうですけど、同質社会からの脱却こそ必要な視座であり、囲い込み式の収斂を「文化」と錯覚してしまうところはどうなんだという時代錯誤に他ならず、日系ブラジル社会の現在を語るなら、藤巻秀樹さんの『「移民列島」ニッポン』(藤原書店)ぐらい目を通してからぬけぬけと言えよという感ですわ。

毎日新聞』の報道で、アイルランド出身で英エコノミスト誌東京特派員のデビッド・マクニールさん(49)は「曽野さんは人種で人を分けて考え、個性を否定している。私の息子は私と日本人の妻の間に生まれたが、どの人種に属することになるのか」とコメントしましたが、曽野綾子さんはどう応えるのだろうか。

「そもそも論」で恐縮ですけど、この現代において、いわば学問として全く根拠のない疑似科学の如き「人種(主義)」で人間を区分することの錯誤がちっとも認識できていないのが曽野綾子さんやその取り巻きなんだろう、「私は聞いた」という実感信仰といううすっぺらい反知性主義

何かを「識者」然として語るのであれば、自身の「不明」を認識してから発言すべきだろう。

どうもおかしいのは、こうした差別主義者の歪んだ言説が、さもありがたいご高説と受け止められてしまう日本社会。これは異常以外の何者でもないですよ。

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曽野さんコラム:反発相次ぐ 「人種住み分け憎悪生む」
毎日新聞 2015年02月21日 東京朝刊


 作家の曽野綾子氏が人種による住み分けを提唱するコラムを書いたことが波紋を広げている。1948年から91年までアパルトヘイト(人種隔離)政策を推進した南アフリカ共和国の駐日大使は、掲載した産経新聞に「アパルトヘイトを許容するもの」と抗議し、日本に住む外国の人々からは「憎しみの感情を生み出す」などと反発の声が出ている。【青島顕、斎川瞳】

 きっかけは、産経11日朝刊の「労働力不足と移民」と題したコラム。曽野氏は今後の日本には労働移民が必要だと説いた上で、居住区について「白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい」などと書いた。これに対し、南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使は「アパルトヘイトを許容し、美化した」と反応。産経に抗議したNPO法人・アフリカ日本協議会は「アパルトヘイトは、一部の集団が、権利を剥奪された他の集団を必要なぶんだけ労働力として利用しつつ、居住区は別に指定して自分たちの生活空間から排除する(中略)システム」と指摘した。

 南太平洋ソロモン諸島出身で東京の大学院に学ぶティモシー・カレさん(31)は褐色の肌に長身。住み分けについて「交流がなくなり、憎しみの感情を生み出す恐れがある」。3年間暮らす大学寮では、外国人と日本人が共に生活しており「互いのよさが分かり、友人もできた。異文化を取り入れることができる」。コラムの内容は知っており、「反対だ」と語った。

 アイルランド出身で英エコノミスト誌東京特派員のデビッド・マクニールさん(49)は「曽野さんは人種で人を分けて考え、個性を否定している。私の息子は私と日本人の妻の間に生まれたが、どの人種に属することになるのか」とコメントした。

 曽野氏は15日の産経朝刊で、「アパルトヘイト政策を日本で行うよう提唱してなどいません」と表明し、毎日新聞に対し、次のような手記(要旨)を寄せた。

      ◇

 南米には、日系人たちが集まって住んでいるコロニア(移住地)が、あちこちにありました。日本にも、自然発生的にできたブラジル人の多い町があると聞いています。しかしいずれも完全に隔離などされていません。そこにいたい人が住み、外国人も自由にその町に出入りして、食物や文化の特殊性を楽しませてもらうわけです。私はそういう形の開放された「自由な別居」があってもいい、と個人的に思っています。

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 ◇曽野綾子

 1931年東京都生まれ。夫は作家、三浦朱門氏。95−2005年日本財団会長。03年文化功労者、12年菊池寛賞。小説に「神の汚れた手」「天上の青」など。保守派の論客としても知られる。
    −−「曽野さんコラム:反発相次ぐ 『人種住み分け憎悪生む』」、『毎日新聞』2015年02月21日(土)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150221ddm041040130000c.html

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