覚え書:「今週の本棚・新刊:『老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体』=鈴木大介・著」、『毎日新聞』2015年03月15日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体』=鈴木大介・著
毎日新聞 2015年03月15日 東京朝刊

 (ちくま新書・864円)

 「オレオレ詐欺」から「母さん助けて詐欺」へと呼び方が変わるにつれて巧妙化する高齢者の詐欺。これを著者は「老人喰(ぐ)い」と名付け、日本社会に構造的な問題があるため「老人喰いはなくならない」と断言する。

 若者は、懸命に働いてもなかなか貧困から抜け出せず、膨大な貯金をなかなか使わない高齢者に大きな不満を抱えている。こうした状況から「圧倒的経済弱者である若者たちが、圧倒的経済強者である高齢者に向ける反逆の刃(やいば)」となって詐欺に駆り立てていると分析する。

 著者の詐欺グループに対する膨大な取材を基に、詐欺手口が再現を交えて具体的に語られていく。名簿業者は、警察を装って電話を掛け、家族構成や経済状況、過去の詐欺被害の有無などを事前調査し、標的にしやすい名簿を作り上げていく。上層部と実動部隊との接点は限定され、構成員は逮捕されても組織のことを自白しないよう訓練され、グループが根こそぎ摘発されるのは文字通り「万が一」でしかないという。

 防犯対策をいくら強化しても、若者の将来不安がある限り、「老人喰い」はなくならないという指摘に、問題の根の深さを実感する。(山)
    −−「今週の本棚・新刊:『老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体』=鈴木大介・著」、『毎日新聞』2015年03月15日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150315ddm015070038000c.html



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