覚え書:「人の心は読めるか? [著]ニコラス・エプリー [評者]三浦しをん(作家)」、『朝日新聞』2015年03月15日(日)付。

4_2

        • -

人の心は読めるか? [著]ニコラス・エプリー
[評者]三浦しをん(作家)  [掲載]2015年03月15日   [ジャンル]人文 


■「わかったつもり」に陥らない

 私たちはふだん、相手のことも自分のこともなんとなくわかったつもりで、会話したり生活したりしている。たまに誤解が発覚し、喧嘩(けんか)になる。「わかったつもり」の規模が大きくなれば、戦争や偏見や差別が生じかねない。
 たとえば、「年を取ると、身体的にも認知力にも衰えがくる」と、お年寄り自身も含め、多くのひとが「わかったつもり」になっている。だが、「老人を賢く思慮深い存在として敬う文化」がある地域では、お年寄りの認知機能を測るテストの結果がいいそうだ。つまり、安易な「わかったつもり」を取り除けば、萎縮することなく、各人が充分(じゅうぶん)に能力を発揮できる場合がある、ということだ。
 では、どうしたら「わかったつもり」に陥らず、相手と自分の感情や思考を、より正確に認識し、受け止めることができるのか。さまざまな実験や研究をもとに、本書はわかりやすくコツを教えてくれる。著者の優しさと誠実な姿勢がにじみ、実用的かつ胸に迫る内容だ。
    ◇
 波多野理彩子訳、早川書房・1944円
    −−「人の心は読めるか? [著]ニコラス・エプリー [評者]三浦しをん(作家)」、『朝日新聞』2015年03月15日(日)付。

        • -





「わかったつもり」に陥らない|好書好日


Resize1667



人の心は読めるか− (ハヤカワ・ノンフィクション)
ニコラス・エプリー
早川書房
売り上げランキング: 4,142