覚え書:「今週の本棚・新刊:『日本人が知らない漁業の大問題』=佐野雅昭・著」、『毎日新聞』2015年03月29日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『日本人が知らない漁業の大問題』=佐野雅昭・著
毎日新聞 2015年03月29日 東京朝刊

 (新潮新書・756円)

 日本人の“魚離れ”が止まらない。国民1人1日当たりの魚介類の摂取量は、2001年の約94グラムから11年は約73グラムに減り、20代に至っては年間1人当たり約15キロと少ない。漁業者数も1990年代は30万人を超えていたが、12年は約17万人に激減。もはや漁業王国の面影はない。

 著者は、鹿児島大教授(水産経済学)で、日本各地の漁村や産地市場をつぶさに見てきた。

 政府や財界系シンクタンクは、大企業がサバやサケなどを世界に輸出するノルウェーの成功を例に、漁業への企業参入や流通の合理化、魚食の簡便化などを提唱する。しかし、著者は日本独特の漁業権の意義を力説。日本の沿岸漁業は多様な魚介類に富む。一見複雑に見える日本の流通システムは、その多様な魚をうまく供給してきた。ブランド化と簡便化をめざす方向は日本の豊かな魚食文化を壊すだけ。ノルウェー型漁業は解決策にならないと主張する。

 また、対面販売で多様な魚料理を提供して人気を集める福岡や鹿児島の中型スーパーを紹介。産地や消費地にいる魚の目利きが美味な魚を提供することが日本の魚食文化を再興させると論じる。(小)
    −−「今週の本棚・新刊:『日本人が知らない漁業の大問題』=佐野雅昭・著」、『毎日新聞』2015年03月29日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150329ddm015070024000c.html


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日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)
佐野 雅昭
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