覚え書:「今週の本棚・新刊:『言葉で覗く近世のくらし』=南條實・著」、『毎日新聞』2015年04月05日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『言葉で覗く近世のくらし』=南條實・著
毎日新聞 2015年04月05日 東京朝刊

 ◇『言葉で覗(のぞ)く近世のくらし』

 (風詠社・1620円)

 約270年間、幕藩体制という特有の統治体制がとられた江戸時代。鎖国政策も導入され、文化も独自に発展した。当時の書物に登場した鍵となる言葉から庶民の生活や考え方に迫った。

 最初に取り上げたのは「五百八十年」。御伽(おとぎ)草子などに登場し、長寿を願う意味を持つ。だが、古くから使われていた「千歳(ちとせ)」ではなく、なぜ半端な数字なのか。背景には何があるのか。さまざまな文献から読み解いていく。このほか、「霜先の薬喰(ぐ)い」「八里半」「おちゃっぴい」「丁と半」などが登場する。

 著者は長年、高校や予備校で数学を教えていたが、国文学や歴史学は素人と自認する。だが、若いころから江戸時代の書物を乱読した。第一線を退いた2000年ころ、国内外で歴史の検証が活発化していたのを契機に、「読書体験で得た知識を素因数分解し」ながらつづったという。数字にまつわる言葉に注目したのも数学教師らしい。

 言葉には、意味がある。近年、自然災害が相次ぎ、地名から分かる危険な場所が再認識された。言葉の歩みをたどる営みは面白く、同時に大切だと、実感させられる。(泰)
    −−「今週の本棚・新刊:『言葉で覗く近世のくらし』=南條實・著」、『毎日新聞』2015年04月05日(日)付。

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言葉で覗く近世のくらし
南條 實
風詠社
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