覚え書:「be between 読者とつくる:神や仏を信じますか?」、『朝日新聞』2015年06月20日(土)付土曜版。

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be between 読者とつくる:神や仏を信じますか?
2015年06月20日

神や仏を信じますか?<グラフィック:岡山進矢>
 ピンチに陥った際に、思わず「神頼み」してしまう。ごく自然な心の動きですよね。だからといって、神様や仏様を心から信じているわけでもない。今回のアンケートでも、「神仏を信じない」という回答が約4割を占めました。「無宗教」であることをことさら強調しがちな日本人。なぜ? ちょっと考えてみました。

 ■無神論ではないけれど

 昨年1月4日付の当欄のテーマは「神頼みしたいことがありますか?」。その問いに「はい」と答えた人は75%だった。なので、「神や仏を信じる」という人も、同じぐらいの数字になるだろうと予想していた。しかし、フタを開けてみればその割合は58%。予想をかなり下回った。

 「信じない」理由では、「科学的でない」「存在が証明できない」に次いで、「神頼みしてもかなわない」が約14%。「神頼みしてもかなったことがないので、神や仏はいないと思う。もしいるなら、こんな理不尽な世の中はありえないはず」(茨城、37歳女性)などと、思い通りにならない失望から神仏に距離を感じている人が目立った。

 信じるという人は、いつ神仏を意識しているのか。一番多かったのは「幸せに感謝する時」。「自然の美しさや神秘を感じた時」「支えがほしい時」が続いた。「神がいないと思うと、人は傲慢(ごうまん)になってしまう」(神奈川、60歳男性)、「特定の宗教ではないが、自然をつかさどる偉大な力や、いわゆる八百万(やおよろず)の神の存在を信じている」(兵庫、49歳女性)。

 一方、「悪いことをしたらバチが当たると思う」という人は68%と、神仏を信じる人の割合を上回った。「何か大きな力の存在は信じるが、それを神や仏とは呼びたくない。そう呼んだとたん、世俗的なものになってしまうと思う」(大阪、52歳男性)という具合に、神仏とは違うが、目には見えないおそれを感じさせる存在を信じる人が、一定の割合でいるようだ。

 「信仰や宗教の話をする頻度」については、過半数の人が「まれ」と答えた。「政治や宗教の話は、個人の信条に直結するからか、避けたい気持ちが強いのだろうか」(東京、73歳男性)

 「信仰している宗教はあるか」という質問で、「はい」と答えた人は16%にとどまった。神仏を信じる人は58%いるのに、かなり差がある。「無神論」と「無宗教」の間には、何が横たわっているのだろうか。

 「日本人の多くは、運命や人間が制御できない自然の力を信じている」(千葉、58歳女性)、「信仰は、支えを必要とする人が持つものだと思う。私にとって神様は、人が自然にいだくおそれを、忘れさせないためのものだ」(神奈川、53歳女性)。

 無宗教だけど、無神論ではない。こうした考え方をする人が、日本では多数派なのかもしれない。(沢田歩)

 ■宗教読み解く力を

 姜尚中(カンサンジュン)・東大名誉教授の話 「無宗教」とはどんな立場でしょうか。日本社会では、中立的で無難な立場と思われがちです。「神はいない」と言い切る「無神論」と違い、思考停止の状態にあるとも言えます。政治の世界でいう「無党派」に似ています。

 学生運動の終幕と共に政治が語られなくなったように、新興宗教が起こした事件は「関わりたくない」印象を宗教に与えました。政治や宗教の話題は、職場や学校では「触れない方が無難だ」と思われています。

 しかし、国際政治の現場を見れば、宗教は世界を動かす大きなパワーの一つです。グローバル人材の育成では語学力も大切ですが、政治や宗教の諸問題について考え、読み解く素養こそが求められています。

 まずは世界の3大宗教の成り立ちや歴史を学ぶこと。信仰を持つ人々と臆せず語り合ってみること。現在の日本の閉塞(へいそく)状況の打開のためには、そんな営みが求められているのです。

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 beモニターへのアンケートをもとにした企画です。モニターは折を見て追加募集します。
    −−「be between 読者とつくる:神や仏を信じますか?」、『朝日新聞』2015年06月20日(土)付土曜版。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S11813458.html


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