覚え書:「今週の本棚・新刊:『日本復帰と反復帰 戦後沖縄ナショナリズムの展開』=小松寛・著」、『毎日新聞』2015年06月21日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『日本復帰と反復帰 戦後沖縄ナショナリズムの展開』=小松寛・著
毎日新聞 2015年06月21日 東京朝刊
(早稲田大学学術叢書・7452円)
沖縄の言論状況は、本土(概(おおむ)ね東京)のそれと大きく違う。戦後沖縄を代表する政治家と知識人の対比で、今は日本国の一地域でありながら単独の「ナショナリズム」が成り立ってきた政治・思想地図をまとめた。米軍基地問題で、「沖縄アイデンティティー」が保守系を含む運動スローガンと化した背景も読めそう。
取り上げた一人は、最後の琉球政府主席で日本復帰後初の県知事だった屋良朝苗(やらちょうびょう)。もう一人の新川(あらかわ)明は、同時期の「反復帰」論の旗手であり、文化・思想誌『新沖縄文学』編集長なども務めた。共に本土の見方では「左」に該当する。ただし、屋良は皇室を敬愛し、昭和天皇の沖縄訪問を望んだ。政治判断も「現実的」。「反復帰」論は、特に1990年代以降の論壇ではやった国民国家批判を先取りし、「過激」かつ「観念的」と言えよう。だが新川は、後に地方紙『沖縄タイムス』社長、会長として現実の会社運営でも活躍した。他方、70年ごろの琉球独立論は、保守系財界人から出た。本土の物差しでは測定不能、「複雑怪奇」な話。琉球政府の尖閣問題への対応を論じた章もあり興味深い。タイムリーに歴史を描いた良書だ。(生)
−−「今週の本棚・新刊:『日本復帰と反復帰 戦後沖縄ナショナリズムの展開』=小松寛・著」、『毎日新聞』2015年06月21日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20150621ddm015070038000c.html