覚え書:「今週の本棚・新刊:『武士の娘 日米の架け橋となった鉞子とフローレンス』=内田義雄・著」、『毎日新聞』2015年08月16日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『武士の娘 日米の架け橋となった鉞子とフローレンス』=内田義雄・著
毎日新聞 2015年08月16日 東京朝刊
(講談社+α文庫・907円)
米国で1925年、英語で書き下ろした自伝的小説『武士の娘』がベストセラーとなった杉本鉞子(えつこ)の数奇な生涯を描くノンフィクション。単行本に新たに「あとがき」を加え、改題して文庫化した。
長岡藩筆頭家老・稲垣平助の娘として生まれた鉞子。幕末、稲垣は新政府軍との徹底抗戦を唱える同藩家老の河井継之助と対立して失脚。維新後はさまざまな商売を手掛けるが、「武士の商法」で失敗する。
鉞子はそのような境遇の中、「武士の娘」として厳しくも誇り高く育てられる。兄の央(なかば)が米国で知り合った商人杉本松雄との婚約が決まるが、実際の渡米は12年後。結婚当初は順調だった杉本の商売が傾き、やがて杉本は急死する。鉞子は収入を得るため、新聞や雑誌にエッセーを投稿する。その文章に目を留めた新聞社の編集責任者から声がかかり、『武士の娘』は出版された。その陰には生涯、彼女を支えた米国人女性フローレンスの存在もあった。
どんな境遇にあろうと、他者や運命を恨むことなく、すべてを前向きに受け止めて進んでいく。芯の通った生き方の底には幼い日にたたき込まれた武士道が根付いている。(木)
−−「今週の本棚・新刊:『武士の娘 日米の架け橋となった鉞子とフローレンス』=内田義雄・著」、『毎日新聞』2015年08月16日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20150816ddm015070137000c.html