覚え書:「今週の本棚・新刊:『十二月八日と八月十五日』=半藤一利・編著」、『毎日新聞』2015年08月16日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『十二月八日と八月十五日』=半藤一利・編著
毎日新聞 2015年08月16日 東京朝刊

 (文春文庫・583円)

 公開中の映画「日本のいちばん長い日」の原作者でも知られる著者の近著。1941年12月8日の開戦と、45年8月15日の終戦の「青天霹靂(へきれき)の二日」を、著名人の日記、手記などから再現した。意外な発見もある。

 開戦の日は、同日の青空のように、爽快感や喜びがうかがえる。当時17歳だった、評論家の吉本隆明防空壕(ごう)掘りなど、重苦しい緊張感が高まる中での開戦の知らせに「ものすごい開放感」を覚える。読売新聞論説委員だった、社会学者の清水幾太郎は「長い間の苦しい便秘の後に漸(ようや)く便通があったという気持」。作家の火野葦平は喜びを超越して「新しい神話の創造が始まった。(略)私はラジオの前で涙ぐんで、しばらく動くことができなかった。この感動は私ひとりではあるまい」。

 一方、終戦の受けとめは、さまざまだ。医師として病院ぐるみで疎開していた、評論家の加藤周一は「涙を流した者はひとりもいなかった。今や私の世界は明るく光にみちていた。(略)すべてはよろこびに溢(あふ)れ、希望に輝いていた」と回想。当時20歳だった作家の丸谷才一は「喜びが胸に湧き起こるというような派手なものでは決してなかった」。(な)
    −−「今週の本棚・新刊:『十二月八日と八月十五日』=半藤一利・編著」、『毎日新聞』2015年08月16日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150816ddm015070106000c.html








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