覚え書:「今週の本棚・新刊:『ロジ・コミックス ラッセルとめぐる論理哲学入門』=アポストロス・ドクシアディスほか著」、『毎日新聞』2015年09月06日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『ロジ・コミックス ラッセルとめぐる論理哲学入門』=アポストロス・ドクシアディスほか著
毎日新聞 2015年09月06日 東京朝刊

 (筑摩書房・2916円)

 世界大戦へと向かう激動の20世紀、基礎の探究に情熱を傾けた偉大な数学者、論理学者たちを描く。意外にもオールカラーの漫画本。1939年9月、ナチス・ドイツポーランド侵攻を前に、バートランド・ラッセルアメリカの大学で講演し、自身の半生を語り始める。

 このなかで、両親がなく祖父母の下で育った幼少期の不安と謎、名だたる思想家たちとの親交、数学の基礎を築くための師との妥協のない共同執筆、論理哲学をめぐる弟子との相克が明らかになる。面白いのは、これと並行してプロットを組み立てる著者たちの議論が、随所に差し挟まれるところ。それが学問的な難しい話の分かりやすい解説となり、結末への伏線ともなっている。

 「論理学と狂気」。なぜ天才たちは狂気に魅入られるのか? 米国は孤立主義を守るべきか、第二次大戦に参戦すべきか? 不穏な空気が通奏低音のように物語全体に流れる。終幕で著者たちが鑑賞する、ギリシャ三大悲劇作家、アイスキュロスの3部作『オレステイア』の舞台に託された寓意(ぐうい)は? 知的好奇心をくすぐる漫画だ。=松本剛史訳、高村夏輝監修(な)
    −−「今週の本棚・新刊:『ロジ・コミックス ラッセルとめぐる論理哲学入門』=アポストロス・ドクシアディスほか著」、『毎日新聞』2015年09月06日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20150906ddm015070051000c.html



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