覚え書:「今週の本棚・新刊:『靖国戦後秘史 A級戦犯を合祀した男』=毎日新聞「靖国」取材班・著」、『毎日新聞』2015年09月06日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『靖国戦後秘史 A級戦犯を合祀した男』=毎日新聞靖国」取材班・著
毎日新聞 2015年09月06日 東京朝刊

 (角川ソフィア文庫・950円)

 戦後70年の夏、安倍晋三首相は側近に靖国神社を代理参拝させ、自分が見送る理由を「政治・外交問題化したから」と説明させた。

 しかし、生涯で意義あることをしたと自負できるのは「A級戦犯を合祀(ごうし)したことである」と豪語した松平永芳(ながよし)宮司は、「東京裁判の否定」という信念から昭和天皇の反対を承知で合祀を決行した。敗戦で出直した日本が参加する第二次大戦後国際秩序への異議申し立て、政治・外交上の挑戦状をたたき付けたに他ならない。

 晩年の昭和天皇は、靖国に参拝しなくなった理由を「今の宮司がどう考えたのか易々と/(父親の)松平(慶民(よしたみ))は平和に強い考(え)があったと思うのに親の心子知らずと思っている」と側近に語り残している。

 松平宮司の登場まで戦後32年間、靖国を守った皇族出身の筑波藤麿(ふじまろ)宮司は、その意を体して合祀を長年、意志的に宙づりにしていた。

 A級戦犯合祀問題を、敗戦直後からの生々しい人間ドラマとして洗い直し、知られざる内幕と背景、将来展望をえぐる。第1次安倍政権の2007年に刊行した単行本の文庫化。巻末に読売新聞の渡辺恒雄主筆が寄稿しているのも読みどころだ。(N)
    −−「今週の本棚・新刊:『靖国戦後秘史 A級戦犯を合祀した男』=毎日新聞靖国」取材班・著」、『毎日新聞』2015年09月06日(日)付。

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