覚え書:「本音のコラム:安保法制以後の政治=山口二郎」、『東京新聞』2015年09月20日(日)付。

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本音のコラム
安保法制以後の政治
山口二郎

 安保法制の成立は立憲主義と民主主義を求める運動にとっては、新たな始まりである。為政者とちょうちん持ちたる一部メディアの醜さを明らかにしたことも、運動の成果である。
 この三カ月の間、日を追って安保法制反対の世論が高まったのは、安保法制のでたらめさと政府の不誠実な態度に関して国民の理解が深まったからである。
 識者コメントの一部には政府の説明も不十分だが、戦争法案というレッテルを貼って対案もなく抵抗した野党や市民運動も単純だという、どっちもどっちという批判がある。この種の相対主義的な冷笑は一見政府を批判しているようでも、理不尽な政治への市民的抵抗を否定する点で、権力への追従でしかない。
 数カ月たてば、国民は怒りを忘れるだろうと、政府・与党は傲慢なことを言っている。十八日、私は前から決まっていた仕事で高知にいて、そこで反対運動に参加した。「国民なめたらいかんぜよ」というコールに唱和した。土佐弁のコールは、国民の気分を何よりもうまく表している。
 この強行採決によって、安倍政権は権力を飾る大義名分や国民との紐帯を自らかなぐり捨て、国会における数以外、何の正統性もない裸の政権となった。力だけに依存する政府は脆い。安倍政権は過去の独裁政権と同じ命運をたどることになる。(法政大教授)
    −−「本音のコラム:安保法制以後の政治=山口二郎」、『東京新聞』2015年09月20日(日)付。

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